くまのまえブログ

当院の漢方診療:漢方医学の基本構造について

近年、疾病構造の変化や高齢化社会、そしてストレスの増大などが進む中で、従来の西洋医学のアプローチに限界を感じることが増えてきました。特に、西洋医学では病気の局所的な原因に焦点を当てがちですが、これだけでは十分な治療が難しい場合もあります。これに対して、病人全体を見ていく漢方医学のパラダイムには、その価値が再認識されています。

今回は、漢方診療を行うにあたり基礎となる漢方医学の基本構造についてご紹介します。

 

① 気の思想

漢方医学における「気」とは、地球環境に普遍的に存在するエネルギーを指し、すべての生命活動を営む生物は、この「気」によって支えられています。生命の営みは、気が循環し、バランスを保つことで成り立っています。医学的には、元気や生気、病気、血気盛んなといった言葉に表現され、気が流れることが生命の維持に不可欠であると考えられています。

 

② 気血水論(きけつすいろん)

「気」の思想は、漢方医学における病態把握の第一層を形成します。病気は、気の量やその流れの障害として捉えられ、生体の変調はこのエネルギーの乱れによるものだと考えます。さらに、気の一部は液化して体の構造を形成し、維持するために必要です。赤色の体液を「血」、無色の体液を「水(津液)」と呼び、これらが調和して生体の機能を支えています。この「気・血・水」の三要素による病態把握法を「気血水論」と言います。

 

③ 心身一如(しんしんいちにょ)

漢方医学では、心と身体は一体であり、切り離せない存在として捉えます。心の動きと身体の機能はすべて「気」によって支えられており、これを「心身一如」と呼びます。心と身体を分けて考えるのではなく、全体としての調和を重視する漢方医学の哲学は、今後さらに重要性を増していくと考えられます。

 

④ 陰陽論

漢方医学における病態把握の第二層を成すのが「陰陽論」です。古代中国の哲学者たちは、自然界のあらゆる事象に陰と陽の二面性があり、それらは不即不離の相互関係にあることを発見しました。例えば、昼と夜、夏と冬、日なたと日かげ、天と地などがこれにあたります。医学においても、陰陽は生体の闘病反応における二元的な要素として現れ、虚実、寒熱、表裏など、さまざまな病態把握法が発展しました。

 

⑤ 病態の流動性

漢方医学の特徴のひとつに、病態を固定的に捉えるのではなく、常に流動的なものとして捉えるという考え方があります。西洋医学では病名を確定し、病理組織学的所見や診断基準に基づいて治療を進めますが、漢方医学では病気は一時的なものであり、常に変化し続けると考えます。この認識は、今後の治療法において重要な要素となるでしょう。

 

⑥ 当院での漢方診療

当院では、西洋医学の治療だけでなく、漢方医学も取り入れて診療を行っています。日本東洋医学会にも所属している内科学会専門医が、患者様一人一人の状態に合わせた漢方治療を行います。西洋医学と漢方医学を組み合わせることで、より包括的なアプローチを提供し、健康の回復と維持を目指しています。

漢方診療にご興味のある方は、ぜひ当院にご相談ください。患者様の健康を全体的に支えるための最適な治療を提供いたします。

 

参考文献:『学生のための漢方医学テキスト』日本東洋医学会学術教育員会、南江堂(2007)

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