当院の漢方診療:気血水 水編
当院では、漢方医学を取り入れた診療を行い、患者様一人ひとりに合わせた個別的な治療を提供しています。生体の異常を説明する病理概念として、気血水(きけつすい)の理論が用いられ、漢方医学においては、気・血・水の3要素が体内を循環することで生体のバランスが維持されると考えられています。今回は、気血水シリーズの最終回として、「水」について、そして気血水のまとめについてお話ししたいと思います。
① 水の概念
「水」は生体の物質的側面を支える無色の液体です。水が体内で偏在する場合、異常が現れると考えられています。この「水」の偏在が病態を引き起こす原因となります。
② 水滞(すいたい)
気や血においては、量の過不足や循環の停滞・逆行などが病態として分類されますが、水に関しては、体内での分布の異常、外への消失、消失による量の不足など、すべてを水の偏在として捉え、「水滞」という病態で認識されています。したがって、下痢や嘔吐も水滞の徴候の一つと考えられます。
水滞の自覚症状には、朝のこわばり、めまいや立ちくらみ、水様の鼻汁、嘔吐・下痢、車酔いしやすいなどがあります。他覚所見としては、浮腫や腹診での胃部振水音などが見られます。これらの症状から水滞が診断されます。水滞を改善する代表的な生薬には、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)などがあり、五苓散(ごれいさん)、真武湯(しんぶとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などの方剤が効果的です。
③ 気血水のまとめ
気血水の病理概念で見ると、疾病の状態は6つのカテゴリーに分けることができます。これによって、改善のための治療方針や方剤がいくつか挙げられます。実際には、西洋医学でも同様に合併症が見られるように、気血水の病態にも複数の病態が現れることがあります。例えば、「気虚と水滞を兼ね備えた病態」などが該当します。その場合、複数の方剤を併用して治療を行うことがあります。このように、気血水理論に基づく漢方医学は、病態把握と治療が直結した非常に実践的な医療体系です。
④ 当院での漢方診療
当院では、患者様一人ひとりの体調や症状に合わせて、西洋医学と漢方医学を融合させた治療を行っています。漢方は、体質や生活習慣に基づいて、長期的な健康維持を目指します。慢性疲労や冷え性、消化不良などの症状に効果を実感していただいています。
漢方にご興味がある方や、自分に合った治療法をお探しの方は、ぜひ当院にご相談ください。私たちは、患者様の健康を総合的にサポートし、最適な治療法をご提案させていただきます。お問い合わせは、当院までお気軽にご連絡ください。
参考文献:『学生のための漢方医学テキスト』日本東洋医学会学術教育員会、南江堂(2007)
● 漢方についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。
① 漢方医学の基本構造(気の思想・気血水論・心身一如・陰陽論・病態の流動性)などは、「当院の漢方診療:漢方医学の基本構造について」。
② 証や漢方方剤などは、「当院における漢方診療:証と漢方方剤について」。
③「気」については、「当院の漢方診療:気血水 気編」。
④「血」については、「当院の漢方診療:気血水 血編」。