くまのまえブログ

第460回緑医学研究会に参加しました

2025年2月25日、20時30分より緑区休日急病診療所の大会議室で開催された第460回緑医学研究会に参加してきました。診療を終えた後にもかかわらず、多くの先生方が集まり、活発な意見交換が行われました。

 

 

演題:日常生活と密接に関係~腸内環境とプレバイオ~

今回の研究会では、藤田医科大学医学部消化器内科学部門の栃尾 巧教授をお迎えし、「日常生活と密接に関係~腸内環境とプレバイオ~」というテーマについてお話しいただきました。

 

腸内環境の重要性

まず、腸内環境がなぜそれほど重要なのかについて触れられました。腸はただ食物を消化・吸収するだけでなく、以下のような重要な役割を果たしています:

1.     消化・吸収

2.     エネルギー物質の生成

3.     重要栄養素の合成

4.     免疫応答

5.     情緒の制御

6.     バリア機能

7.     ホルモン(代謝・食欲)の調節

8.     生体内の酸・塩基のバランス調節

9.     解毒作用の補助

10. 生体リズムの調節

これらの多岐にわたる機能を持っており、腸は身体の「ハブ」とも言える存在です。すべての疾患は腸内環境に何らかの関連があると考えられています。

 

腸内細菌とその重要性

腸内には100兆個もの腸内細菌が存在しています。ちなみに、人間の体細胞は40~60兆個ほどです。この腸内細菌は、生まれてから死ぬまで共存する「もう1人のパートナー」とも言える存在です。このパートナーの性格を知ることが重要で、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが腸内環境を左右します。理想的なバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7です。このバランスが健康的な腸内環境を作り出します。

 

しかし、腸内環境はさまざまな要因で乱れることがあります。

例えば:

● 偏った食事

● 生活習慣の乱れ

● 加齢

● 過剰な衛生環境

● 不要薬物の摂取

これらが腸内フローラに影響を与え、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

プレバイオティクスとプロバイオティクス

プレバイオティクスは腸内の善玉菌を増やす働きがあり、オリゴ糖や食物繊維がその代表的な例です。プレバイオティクスという言葉は、1995年に英国の微生物学者Gibsonによって提唱され、現在では腸内環境を整えるために重要な概念として広く認識されています。

一方、プロバイオティクスは外部から良い菌を摂取する方法です。例えば、ヨーグルトに含まれるビフィズス菌は、通常1000億個以下ですが、健康な人の腸内には5兆個ものビフィズス菌が存在しています。プレバイオティクスによって腸内のビフィズス菌が1.2倍増加するだけでも、2兆個以上のビフィズス菌が腸内に増えることになります。

中でもケストースは、非常に効果的なプレバイオティクスとして注目されています。ケストースは膵癌における栄養状態の改善、糖尿病予備群に対するインスリン抵抗性の改善、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの改善にも効果が報告されています。

 

まとめ

プレバイオティクスの摂取は、病気に強い腸内環境を作り出し、健康維持に大きく貢献します。腸内環境の改善は、体全体の健康に直結しているため、日常的に腸内細菌を意識した食生活を心がけることが大切です。

当院では消化器病専門医による腸活外来を行っており、研究会でも取り上げられた「ケストース」も取り扱っています。今後も腸内環境に関する研究が進み、より多くの人々が健康的な腸内環境を手に入れることができるようお手伝いしていきたいと思っています。

 

くまのまえファミリークリニック