✅ 🔬ペプシノゲン検査とは?―胃の健康状態をチェックする方法
「ペプシノゲン検査」という名前、聞いたことはありますか?
これは、胃の状態を血液でチェックできる検査で、特に萎縮性胃炎や胃がんのリスク評価に役立ちます。
近年では、ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査と組み合わせた「胃がんリスク検査(ABC検診)」として、より正確にリスクを調べられるようになりました。
🧬 ペプシノゲンって?
ペプシノゲン(PG)は、胃の粘膜にある「主細胞」や「粘液細胞」で作られる、たんぱく質分解酵素の前駆体です。
胃酸と反応して活性化されると、「ペプシン」という消化酵素になり、食事中のたんぱく質を効率よく分解します。
このペプシノゲン、実は99%は胃の中に分泌されますが、ごくわずか(約1%)は血液中にも流れ出るため、血液中の量を測定することで、胃粘膜の健康状態を推測できるのです。
ペプシノゲンには2種類あり、それぞれが胃の異なる部位から分泌されます:
● ペプシノゲンI(PGI): 胃の奥(胃底腺領域)に多く分布
● ペプシノゲンII(PGII): 胃の広い範囲(噴門腺、幽門腺、十二指腸腺)に分布
このPGIの数値や比率(PGI/PGII比)**を組み合わせて評価することで、胃粘膜の萎縮の進行度を把握できます。
📚 試験問題から学ぶ!ペプシノゲンのポイント
日本消化器病学会専門医認定試験(2017年)出題例:
*ペプシノゲンについて正しいものを1つ選べ。
選択肢:
a. 胃の壁細胞で産生される。
b. 血中濃度はPPIの影響を受けにくい。
c. pHが低いとペプシンとなり脂肪の消化を行う。
d. 粘膜萎縮が胃体部に及ぶと血清ペプシノゲンI濃度が低下する。
e. H. pylori除菌が成功すると血清ペプシノゲンII濃度が上昇する。
正解:d
解説:
a. 胃の主細胞で産生されます。
b. 血中濃度はPPIの影響を受けます。
c. pHが低いとペプシンとなり、たんぱく質の消化を行います。
d. 胃体部の萎縮が進むと、PGIを分泌する主細胞が減少し、血中PGI濃度が低下します。
e. H. pylori除菌が成功すると、炎症が落ち着くため、血清ペプシノゲンは低下します。
⚠️ なぜ「胃の萎縮」が問題なの?
胃の粘膜が傷んで薄くなり、胃酸や消化酵素を出す細胞が減少した状態を「萎縮性胃炎」と呼びます。
この状態が長く続くと、胃がんのリスクが高まることが知られています。
そのため、ペプシノゲン検査を用いて胃の萎縮の有無を早期に把握することは、胃がん予防において非常に重要です。
🧾 ペプシノゲン検査の基準とその意味
ペプシノゲン検査では、以下の基準を満たす場合に「PG法陽性」と判定されます:
● PGI値が70ng/mL以下
● PGI/PGII比が3.0以下
この状態では、高度な胃粘膜萎縮が疑われ、胃がんのリスクが高いグループに分類されます。
血清PG値は胃粘膜の萎縮・炎症・H. pylori感染の3つの因子に影響を受けると報告されています。
① 主細胞・副細胞を中心とする分泌細胞からのPGの血液中への分泌、
② H. pylori感染に伴う活動性胃炎による細胞の崩壊にともなう、多量のPGの血中への放出などがあります。
詳しく説明すると、H. pylori感染によって胃粘膜に炎症が起こり、細胞の崩壊が生じ、PG分泌細胞からPGIおよびPGIIが放出されることで、一時的に血清PGI・PGII値が上昇します。
しかし、その後の持続的な炎症によって胃体部の萎縮が進行すると、PG分泌細胞数が減少し、結果的に血清PGI・PGII値も徐々に低下します。
さらに、PGIとPGIIの胃における分布の違いから、PGIは胃体部の萎縮の影響を受けやすい一方、PGIIは胃幽門腺や十二指腸腺からも分泌されるため影響を受けにくく、萎縮の程度が強くなるほどPGIは著しく低下し、PGI/PGII比も低下します。
実際にこの検査法は、感度64%、特異度87%という精度で胃がんをスクリーニングできると報告されています。
より精度の高いリスク評価のために、ピロリ菌抗体検査とペプシノゲン検査を組み合わせた「胃がんリスク検査(ABC検診)」が行われています。
名古屋市在住の40歳以上59歳以下の方(年度末時点の年齢)は、ワンコイン(500円)で受診可能です。
👉名古屋市公式ホームページ「胃がんリスク検査のご案内」はこちら。
なお、検査料金は500円ですが、自己負担金が免除される制度もあります。詳細は当院までお問い合わせください。
ABC分類の概要:
- A群: ピロリ菌抗体陰性・PG陰性 → 胃が健康な方
- B群: ピロリ菌抗体陽性・PG陰性 → ピロリ感染あり、萎縮は進行していない
- C群: ピロリ菌抗体陽性・PG陽性 → 萎縮性胃炎の進行が疑われる
- D群: ピロリ菌抗体陰性・PG陽性 → 過去に感染があり、胃粘膜の萎縮が高度
この分類により、どのグループがより胃がんになりやすいかを明確に把握できます。
🛑 ピロリ菌除菌後の注意点
ペプシノゲン検査は非常に有用ですが、ピロリ菌を除菌した方には推奨されていません。
なぜなら、除菌によって胃の炎症が治まるとPGI/PGII比が一時的に正常化し、PG法が「陰性」と判定されてしまうためです。
つまり、PG法は「現在ピロリ菌に感染している可能性がある方」を対象としたスクリーニング法であり、除菌済みの方には適していないことを、医療従事者も患者様も正しく理解しておくことが大切です。
🩺 胃の健康チェックには、専門的な視点が欠かせません
当院では、日本消化器病学会認定の専門医が在籍しており、
ペプシノゲン検査やピロリ菌検査の結果を総合的に判断した上で、胃カメラの必要性や治療方針を一貫してご提案しています。
胃の調子が気になる方、ピロリ菌や胃がんリスク検査で「要精密検査」となった方は、ぜひ一度ご相談ください。
ご予約・お問い合わせは
📞 TEL:052-876-3351
🌐 くまのまえファミリークリニック公式サイト
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