破傷風
四種混合(DPT-IPV)ワクチン(定期接種・不活化ワクチン)で予防できる病気について、不定期にお話します。今回は破傷風です。
破傷風菌は、芽胞の形で土壌や動物の糞便中に常在する細菌です。土いじりのときにできる目立たないほどの傷や釘を踏むことによる軽いケガ、交通事故などをきっかけに傷から侵入します。傷が見当たらなくても感染する場合もあります。
極少ない数の菌でも侵入して増殖すれば容易に発病します。
症状は細菌そのものからでなく、破傷風菌が作る毒素によって起こります。毒素には、神経毒(破傷風毒素、別名:テタノスパスミン)と溶血毒(テタノリジン)の2種類があります。破傷風の主症状である強直性痙攣の原因は、主に神経毒である破傷風毒素によるものと考えられています。
外傷部位に侵入した芽胞は感染部位で毒素を作りだします。作られた毒素は、傷の付近にある末梢神経に吸収されて脳や脊髄まで到達します。毒素は同部位で毒性を発揮し、筋肉がけいれんします。口が開きにくい、顎が疲れるといった症状に始まり、歩行や排尿・排便の 障害などが現れます。約80%の患者さんには全身的な症状(けいれん、呼吸困難、脳炎など)がみられます。一旦発症すると死亡率は30%と高く、非常に危険な病気です。
最近の発症数は年間120人くらいです。予防接種の普及により、お子さんの発症は稀になりましたが、予防接種の効果が10年程度で減弱することもあり、予防接種を受けていないか、効果が減弱したと考えられる中高年以上の発症がほとんどです。
診断は、典型的な臨床経過(開口障害から始まる症状等)から診断されることがほとんどです。 治療は、毒素に対する抗体(抗破傷風ヒト免疫グロブリン)を投与します。しかし、病状が進行した状態では治療効果が限定的になるため、できる限り速やかに投与する必要があります。その他、発症時にはさまざまな合併症が現れるため、症状を和らげる対症療法を行います。
屋外で皮膚の傷を完全に防ぐことは困難であり、どうしても予防接種が必要になります。
当院は地域のワクチン接種専門機関になれるよう、スタッフ全員が日々努力しています。
VPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)は数多くあり、生後2ヶ月からワクチン接種が必要です。四種混合(DPT-IPV)ワクチン(定期接種・不活化ワクチン)は生後3か月から始まります。
ワクチン接種希望や相談など、当院へお気軽にご連絡下さい。