消化管神経内分泌腫瘍
今回は消化管における神経内分泌腫瘍(NEN: ねん、neuroendocrine neoplasm)についてお話します。神経内分泌細胞に由来する腫瘍で、膵臓や消化管、肺など全身のさまざまな部位から発生します。希少疾患に分類されていますが、近年では世界的にも有病率や発生率が増加傾向にあります。
内視鏡所見は、主として粘膜深層の内分泌細胞から発生する膨張性腫瘍を呈するため、粘膜面は表面平滑な類円形の粘膜下腫瘍として認められます。腫瘍増大に伴い粘膜表面に中心陥凹や潰瘍形成を伴うことが多くなります。
診断の確定には、内視鏡下生検を行って病理診断をします。必要に応じて特殊な生検(ボーリング生検やEUS-FNAなど)が必要になります。分化度(本来の正常な細胞の形態をどれくらい維持しているか)により大きく2つに分けられ、高分化型はNET(ねっと、neuroendocrine tumor)、低分化型はNEC(ねっく、neuroendocrine carcinoma)と言われます。特異的マーカーとして、クロモグラニンAやシナプトフィジンなどが病理診断に使われます。またNENの悪性度の指標として、Ki67 indexを用いたGrade分類が有用で細胞増殖マーカーであるKi67を染色し、染色陽性細胞をカウントすることで陽性細胞の数、すなわち増殖能をそれぞれ低悪性度からG1→G2→G3→NECに分類します。
先日、当院で経験した直腸神経内分泌腫瘍の写真を提示します(部位は直腸のRb、約6mm 表面平滑な類円形の粘膜腫瘍。病理診断はNET,G1)。
診断がつけば、全症例において切除による根治治療を行うことが推奨されます。
当院では内視鏡専門医による苦痛の少ない大腸カメラを受けることができます。また、今回の症例のように小さな病変でも診断することが可能です。検診便潜血陽性などで検査を希望される方は当院を受診して頂ければと思います。