B型肝炎の抗原・抗体とは?
今回は、B型肝炎における抗原と抗体ついてお話します。
B型肝炎とは
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで肝臓に異常が生じる病気の総称です。HBVに感染しても自覚症状が現れないケースが多いものの、肝炎を発症すると肝硬変や肝臓がんに至ることがあります。気づかないうちに重篤な病気へ進行することがあるため、注意が必要です。
B型肝炎に関する主要な抗原・抗体
B型肝炎を診断・フォローするためには、さまざまな抗原・抗体を調べることが重要です。これらの検査項目は、患者さんの治療方針を決める際の指標となります。
●HBs抗原(表面抗原): B型肝炎ウイルスの表面に存在するタンパク質で、感染の指標となります。HBs抗原が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染していることを示します。
●HBs抗体(表面抗体): B型肝炎ウイルスに対する免疫が形成されていることを示す抗体で、陽性であれば過去に感染し、その後治癒したことを意味します。また、HBVワクチンを接種した場合にも陽性となります。
●HBc抗体(コア抗体): B型肝炎ウイルスの内部タンパク質に対する抗体で、過去の感染の証拠となります。HBs抗原が陰性でも、HBc抗体が陽性の場合、以前に感染したことがある可能性があります。なお、HBVワクチン接種ではHBc抗体は陽性になりません。
●IgM型HBc抗体: 急性期の感染で特異的に上昇する抗体で、現在B型肝炎ウイルスに急性感染していることを示唆します。
●HBe抗原: ウイルスが活発に増殖している状態を示す指標で、陽性であれば一般にHBVの増殖力が強いことを示します。
●HBe抗体: HBe抗原が陰性のときに見られる抗体で、陽性であれば一般にHBVの増殖力が低下していることを示します。
●HBV-DNA: 血中のHBVのウイルス量を測定するもので、ウイルスの活動性を評価するために使用されます。
●HBコア関連抗原(HbcrAg): HBVのコア領域に関連する抗原で、pregenomic mRNAから翻訳されるHBc抗原、precore mRNAから翻訳されるHBe抗原、p22cr抗原の3種類の抗原構成蛋白の総称です。特に核酸アナログ治療中の再燃の予測や治療中止時期の決定の血清マーカーとして有用です。
●HBVゲノタイプ(遺伝子型): HBVには複数のゲノタイプがあり、これにより治療反応や予後が異なることがあります。ゲノタイプの調査は、治療方針決定において重要です。
B型肝炎ワクチンについて
B型肝炎は予防可能な疾患で、ワクチンによって抗体を効果的に形成できます。特に新生児や未感染者へのワクチン接種が推奨されており、接種によりB型肝炎への感染リスクを大幅に低減できます。ワクチン接種後にHBs抗体が陽性となれば、長期間にわたって免疫が保持されます。
当院の肝臓外来について
当院では、日本肝臓学会肝臓専門医によるB型肝炎の検査や治療を行っています。B型肝炎が疑われる場合や、定期的なフォローアップが必要な患者様には、専門的な検査と治療を提供しています。検査でB型肝炎が疑われる場合や、定期的な経過観察を希望される方は、ぜひ当院にご相談ください。
文献
B型肝炎治療ガイドライン(第4版):日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編