当院の漢方診療:陰陽について
今回のブログでは、漢方診療において重要な役割を果たす「陰陽」の概念についてご説明します。陰陽は、古代中国の自然哲学に基づき、私たちの健康を理解するための基本的な考え方となります。具体的にどのように診療に活かされるのか、以下で詳しく解説いたします。
①陰陽の概念
陰陽は、自然界のあらゆる現象における二元論的なバランスを指します。天と地、昼と夜、寒と熱、男と女など、相反する事象が存在し、これらが調和を保ちながら成り立っています。このバランスが取れていることが自然界の調和を保つ鍵となります。
日本東洋医学会 ホームページより
②陰陽の診断
陰陽の概念は人体にも当てはまります。人間の健康は、これらの陰陽のバランスが取れていることで維持され、何らかの原因でそのバランスが崩れると、病気が発生します。漢方医学では、陰陽のバランスを診ることが漢方医学的診断の第一歩となります。陰証と陽証に分けて病態を把握することで、患者様に最適な治療法を選択することができます。
日本東洋医学会 ホームページより
③陰陽の治療
● 陽証
陽証は、気血が充実し、新陳代謝が活発な状態です。体温が上昇し、病邪に対する積極的な反応が見られることが特徴です。陽証の患者様は、体力が充実している方が罹患しやすいと考えられています。治療は、病気の主座が表(身体の表層部:皮膚・筋肉・関節・神経など)であれば「発汗」、裏(身体の深部や内臓)であれば「瀉下(しゃげ)」、半表半裏(表と裏の中間:肺・肝などの横隔膜周囲の臓器)であれば「清解(せいかい)」を基本方針とします。例えば、石膏や大黄などの寒剤を使用し、積極的に炎症を抑えていきます。
● 陰証
陰証は、気血が不足し、新陳代謝が衰えた状態で、病邪に対する反応が鈍くなる時期です。この状態では、体温が低下し、体力が不足している患者様に見られることが多いです。治療には、附子・乾姜・細辛などの熱薬(温める作用のある薬剤)を主成分とした方剤(例:真武湯・四逆湯)を使用し、代謝を促進しながら解熱を目指します。この治療法は「温散(うんさん)」と呼ばれ、陽証の治療方法とは大きく異なります。
④当院での漢方診療
当院では、従来の西洋医学の治療に加え、漢方医学を取り入れた診療を行っています。日本東洋医学会に所属する内科学会専門医が、患者様一人一人の症状や体調に合わせた個別の漢方治療を提供します。西洋医学と漢方医学を組み合わせることで、より包括的なアプローチが可能となり、患者様の健康回復と維持をサポートいたします。
漢方に興味がある方、または自分に合った治療法を探している方は、ぜひ当院にご相談ください。患者様の健康を全体的に支える最適な治療を提供いたします。
● 漢方についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。
① 漢方医学の基本構造(気の思想・気血水論・心身一如・陰陽論・病態の流動性)などは、「当院の漢方診療:漢方医学の基本構造について」。
② 証や漢方方剤などは、「当院における漢方診療:証と漢方方剤について」。
参考文献:『学生のための漢方医学テキスト』日本東洋医学会学術教育員会、南江堂(2007)