当院の漢方診療:六病位 後編
前回に引き続き、漢方診療における重要な概念である『六病位』について解説いたします。今回はその中でも、三つの陰病—「太陰病」「少陰病」「厥陰病」を中心にご説明します。
六病位 前編については、くまのまえブログは「当院の漢方診療:六病位 前編」を参照してください。
1.六病位の概念
前回お話しした内容を踏まえ、今回も『六病位』の進行について改めてご説明します。各病期では闘病反応が起こっている主な場所が決まっており、陽病では、太陽病は表の位置に、小陽病は表裏の間に、陽明病は裏に位置しています。陰病は主として裏に位置しています。陽病では病の位置が明確に分かれており、症状がはっきりと現れるため、診断が比較的容易です。一方、陰病ではすべて病が裏にあるため、症候が分かれにくいですが、病の緩急を表すとされています。
2.六病位の特徴
(4) 太陰病
太陰病は裏の寒であり、体力がまだ半ば残っている状態です。主な症状には、腹部の膨満感、下痢、腹痛、食物が胃から腸に進まない感覚、嘔吐などがあります。三つの陰病の中では緩証です
(5) 少陰病
少陰病は表裏寒の症状を示します。その特徴的な症状には、脈が沈微、沈細、気力衰憊(すいはい)、ただし悪寒し、倦怠嗜眠(しみん)、下痢、手足厥冷(けつれい)、身体疼痛、心煩(しんぱん)などの症候があり、場合によっては、腹痛、虚渇、背部に悪寒を感じ、あるいはかえって虚熱を発して煩燥(はんそう)します。三陰病の中で急証ですが厥陰病よりは緩証です。
(6) 厥陰病
厥陰病は裏寒の極であり、陰陽が錯雑する症状を現します。主な症状には消渇し、気が心に上撞(精神的に不安定になる)し、心中疼熱し、下痢、厥冷(けつれい)するなどを認めます。三陰病の中で最も急性の症状を示し、治療が急を要する場合が多いです。
3.六病位の診断と治療
病の進行 :病は通常、太陽病から始まり、数日で小陽病に進行し、約10日を経て陽明病へ、さらに太陰病、少陰病、厥陰病と進行し、最終的には死に至ることがあります。しかし、時には太陽病から直接陽明病に移行することもあり、また小陽病から直接陰病に進行することもあります。特に、少陰病として発病するケースを「直中(じきちゅう)の少陰」と呼びます。
慢性病と六病位 :六病位は本来急性疾患に基づいて構築された理論ですが、慢性病にも応用可能です。慢性病の場合、陽病は小陽病、陰病では太陰病が多く見られます。慢性病においては、発熱症状を除いた特徴的な症状に基づいて診断を行うことが重要です。
体力と病毒 :病は正気と邪の闘いと考えることができます。病の初期である陽証期では正気は十分にあり、邪との闘いにおいても十分に発熱することができ、症候も発揚的になれます。一方、病の後半期である陰証期では正気は消耗し、邪との闘いにおいて熱産生が十分に行われず発熱することができず熱なく悪寒の状態になると考えられます。また症候も沈降的になります。
治療原則
● 太陽病:表に病が現れているため、体表から邪気を排出するために発汗法が用いられます。
● 陽明病:病が裏にあるため、瀉下剤(下剤)を用いて腸管から邪気を排出します。
● 小陽病:発汗や瀉下ではなく、邪を清解する方法が使われます。
● 陰証:基本的には裏の寒であるため、温散(温める方法)を用いた治療が適切です。
4.当院での漢方診療
当院では、患者様一人ひとりの体調や症状に合わせた西洋医学と漢方医学を融合させた治療を行っております。漢方は、体質や生活習慣に基づいて長期的な健康維持を目指すため、慢性疲労や冷え性、消化不良などの症状に効果を実感していただいています。
漢方にご興味がある方や、自分に合った治療法をお探しの方は、ぜひ当院にご相談ください。私たちは、患者様の健康を総合的にサポートし、最適な治療法をご提案させていただきます。
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