くまのまえブログ

当院の漢方診療:気血水 血編

当院では、漢方医学を取り入れた診療を行い、患者様一人ひとりに合わせた個別的な治療を提供しています。生体の異常を説明する病理概念として、気血水(きけつすい)の理論が用いられ、漢方医学においては、気・血・水の3要素が体内を循環することで生体のバランスが維持されると考えられています。今回は、前回の「気」に引き続き、「血」について詳しく解説いたします。

 

① 血の概念

血は正常な状態では、気の動きによってその量が保たれ、全身を巡行しています。血液は、身体に必要な栄養を供給し、身体や臓器(物質的側面)を形づくる役割を担っています。したがって、その量や巡行に障害が起こると、血の異常が現れることになります。

 

② 血虚(けっきょ)

「血」の量が不足すると、血虚という状態が現れます。血虚の自覚症状には、眼精疲労、こむら返り、皮膚の乾燥やあれ、爪の割れ、頭髪の抜けやすさ、月経異常などがあり、他覚所見としては腹直筋の攣急(れんきゅう)などがあります。これらの症状から血虚が診断されます。この状態を改善する代表的な生薬には、当帰(とうき)、地黄(じおう)などがあり、四物湯(しもつとう)や当帰飲子(とうきいんし)などの方剤が効果的です。

 

③ 瘀血(おけつ)

「血」の流通が障害されると、瘀血という病態が生じます。停滞した血は、血の機能を発揮できなくなるだけでなく、有害なものに変化することがあります。瘀血の自覚症状には、不眠、精神的な不安定さ、目の下のクマ、月経異常などがあり、他覚所見としては、舌質や歯肉の暗赤紫化、腹診での臍傍圧痛(さいぼうあっつう)、毛細血管の拡張(細絡)などが現れます。自覚症状とともに、他覚所見も参考にして瘀血の診断が行われます。この状態を改善する代表的な生薬には、牡丹皮(ぼたんぴ)、桃仁(とうにん)などがあり、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、通導散(つうどうさん)などの方剤が効果的です。

 

今回ご紹介した「血」も、漢方診療において非常に重要な要素です。次回は「水」についてお話しさせていただきます。気血水のバランスを整えることが、健康維持の鍵となりますので、引き続きご興味のある方はぜひご覧ください。

次回もお楽しみに!

 

参考文献:『学生のための漢方医学テキスト』日本東洋医学会学術教育員会、南江堂(2007)

 

● 漢方についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。

① 漢方医学の基本構造(気の思想・気血水論・心身一如・陰陽論・病態の流動性)などは、「当院の漢方診療:漢方医学の基本構造について」。

② 証や漢方方剤などは、「当院における漢方診療:証と漢方方剤について」。

③「気」については、「当院の漢方診療:気血水 気編」。

くまのまえファミリークリニック