急性胃腸炎:アストロウイルス感染症
今回はウイルス性胃腸炎の原因の一つであるアストロウイルスについてお話しします。ロタウイルスとは異なり、あまり馴染みのないウイルスかもしれませんが、アストロウイルスは下痢や嘔吐を引き起こすウイルス性胃腸炎の原因となり、特に乳幼児や高齢者に多く見られます。1975年にヒトの便から初めて発見されたこのウイルスは、非常に小さなサイズ(28~30nm)で、プラス鎖の一本鎖RNAウイルスです。現在、アストロウイルスには1から8の血清型が知られており、これらがさまざまな症状を引き起こします。
1.症状と健康影響
アストロウイルスに感染すると、潜伏期は12~72時間(通常24~48時間)で、軽度の急性胃腸炎症状が現れます。主な症状には下痢、嘔吐、腹痛、軽度の発熱が含まれ、これらは通常1~3日間続きます。後遺症はほとんどありませんが、特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人々にとっては、症状が重篤になる可能性があります。
2.感染経路と環境中での挙動
アストロウイルスはヒトの腸内で増殖し、ヒトが唯一の宿主であることが特徴です。感染経路は主に経口感染で、汚染された食品や水を摂取することによって感染します。また、ウイルスが付着した物体に触れることでも感染が広がります。ヒト-ヒト感染も、吐物の飛沫やウイルスに汚染された器物の表面に接触することでも発生します。
3.アストロウイルスの感染実態
日本では毎年冬季に、特に乳幼児に胃腸炎が多く見られます。感染者のうち、アストロウイルスによるものは約3%程度とされていますが、乳幼児のうち80%が5歳までに一度は感染を受けると言われています。保育園や学校、高齢者施設などでは集団発生も見られることがあります。
4.検査法
アストロウイルスの診断には、ヒトの患者便や吐物からRT-PCR法による遺伝子検出が主に用いられています。また、電子顕微鏡でウイルス粒子を観察する方法もあり、特有の5~6点の星型構造を持つウイルス粒子が確認されることが特徴です。
5.予防と対策
アストロウイルス感染を予防するためには、まず手洗いを徹底することが最も重要です。また、患者の便や吐物の処理時には、マスクや手袋を着用するなどの細心の注意が必要です。水源が汚染されないよう、衛生的な環境を保つことが予防には欠かせません。
6.治療法
現在、アストロウイルスに対して特効薬やワクチンは存在しません。そのため、治療は主に症状を軽減することを目的としています。特に下痢の症状が強い場合には、補液が必要になることがあります。脱水症状の予防と軽減を図るため、十分な水分補給が重要です。
アストロウイルスはウイルス性胃腸炎の原因となります。特に集団生活をしている場所では感染拡大のリスクが高くなります。日常的な予防策としては、手洗いや衛生管理を徹底し、感染が広がらないように注意を払いましょう。