🌟 カンピロバクター腸炎について
発熱・腹痛・下痢で受診された患者さん。詳しく聞くと、「焼き鳥屋で生の鶏モモを食べました…」とのこと。
まさに、典型的なカンピロバクター腸炎のエピソードです。
今回は、このカンピロバクター腸炎について深掘りして解説します。
日本消化器病学会専門医試験に出題された内容もご紹介します。
🧬カンピロバクターってなに?
カンピロバクターは、鶏、牛、豚、犬、猫、小鳥などの動物が保菌しており、
汚染された食肉の摂取や感染動物との接触を通じて人に感染します。
特に生や加熱不十分な鶏肉が感染源となることが多く、感染すると以下の症状を引き起こします:
● 発熱
● 腹痛
● 下痢
● 嘔吐
起因菌の約90%以上は Campylobacter jejuni (写真1)であり、Campylobacter coli はまれです。
写真1

愛知県衛生研究所ホームページより
🔍 主な感染経路
● 加熱不十分な鶏肉(鶏刺し、たたき、焼き鳥など)
● 未殺菌の飲料水
● ペット(犬・猫・小鳥など)との接触
潜伏期間:2〜7日間
発症のピーク:5〜7月に多くみられます
🌟 主な症状の特徴
🌀 発熱(38℃前後)
🌀 激しい腹痛
🌀 水のような下痢(時に血便を伴うことも)
🌀 吐き気・嘔吐・倦怠感
ほとんどの方は自然に軽快しますが、乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方では重症化のリスクがあります。
🌟 要注意の合併症:ギラン・バレー症候群
感染から1~3週間後にまれに起こる、神経の病気です。
⛔ 両手足のしびれ・力が入らない
⛔ 進行すると呼吸困難も
➡ ギラン・バレー症候群患者の30〜40%が、カンピロバクター感染の既往ありと言われています。
見逃してはならない合併症です。
ちなみに…あの「ゴルゴ13」もギラン・バレー症候群に罹患しています。
📖 日本消化器病学会専門医試験(2018年出題)
【問題】カンピロバクター腸炎について正しいものを2つ選びなさい。
a. 高齢者の発症が多い
b. 潜伏期間は1~2日間である
c. Campylobacter coliによる感染が最も多い
d. 食中毒だけではなくペットからの感染も重要視されている
e. ギラン・バレー症候群患者では約30%に本症の罹患既往が認められる
✅ 正答:d, e
解説
● a. 誤。若年者に多く、高齢者は少ない。
● b. 誤。潜伏期間は2~7日。
● c. 誤。90%以上は Campylobacter jejuni。
● d. 正。ペットからの感染も重要。
● e. 正。ギラン・バレー症候群の30~40%がカンピロバクター感染後。
🌟 治療法は?
💧 基本は水分補給!
● 経口補水液やスポーツドリンクで脱水を防ぐ
● 食事はおかゆなど消化の良いものを控えめに
💊 薬物治療
● 下痢止めは原則使用しない(菌の排出を妨げるため)
● 必要に応じて整腸剤や消化薬を処方します。
● 重症例ではマクロライド系抗菌薬(例:エリスロマイシン)を使用
🌟 予防のポイント
🔶 鶏肉は中心部までしっかり加熱!
🔶 生肉を扱った包丁・まな板は熱湯消毒!
🔶 手洗いを徹底!
🔶 ペットのふんに触れた後は必ず洗浄!
🔶 未殺菌の水(井戸水・湧水など)を飲まない!
🌟 まとめ
✅ カンピロバクター腸炎は、日本で最も多い細菌性腸炎の一つ
✅ 十分な加熱と二次汚染の予防が最大の予防策
✅ 治療の基本は水分補給と安静
✅ ギラン・バレー症候群という重大な合併症に注意
✅ 鮮度や見た目に騙されず、必ず加熱して安全に!
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