🌟第31回 緑・大同地域連携研究会に参加しました!🌟
令和7年5月23日(金)、診療終了後に「第31回 緑・大同地域連携研究会」に参加いたしました。
今回の会場は緑区休日診療所 大会議室で、時間は20時30分から21時30分までの1時間。
遅い時間にもかかわらず、多くの医療従事者が集まり、地域連携の大切さと最新の知見について意見を交わしました。
🩺今回の演題と講師
演題:
「病診連携を踏まえた心不全治療~2025年改訂版心不全診療ガイドラインを踏まえて~」
演者:
大同病院 循環器内科 森田 純生先生
📘心不全とガイドライン診療の重要性
心不全は、外来診療でも頻繁に遭遇する疾患のひとつです。慢性で進行性の病態であり、特に高齢化社会では患者数が増加している現状があります。
今回のご講演では、8年ぶりに全面改訂された「2025年版 心不全診療ガイドライン」を中心に、日常診療に即した実践的なお話を伺うことができました。
ガイドラインに沿った診療を行うことで、エビデンスに基づく医療が提供可能となり、患者さんのQOL(生活の質)向上にもつながります。
💡学び① 心不全の基本概念と新たな分類
🔷 心不全の定義と基本概念
定義:
心不全とは、心臓の構造・機能的な異常によってうっ血や心内圧の上昇、心拍出量の低下・組織低灌流が生じ、呼吸困難・浮腫・倦怠感・運動耐容能の低下などの症状を引き起こす「症候群」として定義されています。
基本概念:
- ポンプ機能の低下による循環不全
- 進行性の慢性疾患
- 急性増悪と寛解を繰り返す経過
🔷 診断の三要素
- 心臓の構造的・機能的異常
- 客観的検査所見(例:BNP上昇、肺うっ血)
- 臨床症状や徴候の存在(呼吸困難、むくみ、倦怠感、体重増加 など)
📘2025年版ガイドラインの主な改訂ポイント
● 早期発見・介入の重要性強調(ステージA・B)
● HFimpEF(改善型心不全)という新たな分類の導入
→ 治療効果でLVEFが改善しても治療を中断しない重要性が明記されました
● 「四本柱療法」の確立とSGLT2阻害薬の役割
● HFpEF(駆出率保持型心不全)に対する治療戦略の明文化
● 慢性腎臓病(CKD)を心不全リスク因子として再評価
● 緩和ケア・ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の早期導入
● 遠隔モニタリングなどデジタル技術の活用推奨
🩺ステージ分類(A〜D)と早期介入の必要性
ステージ |
状態 |
主な特徴 |
A |
構造異常なし・症状なし(心不全リスク) |
高血圧、糖尿病、CKD、肥満、動脈硬化疾患など |
B |
構造異常あり、症状なし(前心不全) |
左室肥大、無症候性弁膜症、心筋梗塞既往 など |
C |
構造異常あり、症状あり(症候性心不全) |
息切れ、浮腫、易疲労感、運動耐容能低下 |
D |
高度症状・標準治療抵抗性(難治性末期心不全) |
安静時症状、頻回入院、終末期対応の検討 |
🔍LVEF(左室駆出率)による分類
● HFrEF(駆出率低下型):LVEF≦40%
→ 収縮機能障害。四本柱療法(RAS阻害薬・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬)
● HFmrEF(駆出率境界型):LVEF 41~49%
→ HFrEFからの改善またはHFpEFからの悪化。SGLT2阻害薬を含む治療
● HFpEF(駆出率保持型):LVEF≧50%
→ 拡張機能障害が主体。高齢者・高血圧症例に多く、治療効果の立証が難しい
● HFimpEF(駆出率改善型):以前LVEF≦40%→現在は改善(10%以上向上)
→ 治療中断で再悪化のリスクがあり、治療の継続が重要
🔧その他の治療戦略・サポート体制
● デバイス療法・外科治療:ICD、CRT、VAD、心臓移植など
● 緩和ケアとACPの導入
● ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の進め方も学習
🧠学び②以降:学んだ内容まとめ
🌟② 予防とリスク管理
● ステージA・Bの段階からの積極的な管理
● 糖尿病と心不全の関係(Framingham研究:男性2倍、女性5倍の発症リスク)
● GLP-1受容体作動薬に関する最新エビデンス
🌟③ その他
● 生活習慣指導と自己管理の促進
● 多職種連携の重要性と継続的なフォローアップ体制
🌱まとめ:学びを明日からの診療に活かして
特に今回印象深かったのは、HFimpEF(駆出率改善型心不全)という新しい概念についての学びです。
治療効果が出ているからといって、薬剤を中断すると再悪化のリスクがあるため、改善後も治療の継続が必要であるという点が強調されました。
今回の学びを、地域医療の現場での診療にしっかりと活かし、患者さんにとってより安全で効果的な医療を提供していきたいと思います。