睡眠時無呼吸症候群(SAS):CPAP(持続陽圧呼吸療法)について
今回は、睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)における治療法であるCPAPについて詳しくお話しします。
① 睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に停止するか、極端に浅くなる状態が繰り返される疾患です。これにより血中酸素濃度が低下し、脳が一時的に覚醒して呼吸を再開しようとします。この覚醒が繰り返されることで、深い眠りが妨げられ、十分な休息が得られなくなります。結果として、翌朝の目覚めが悪くなるだけでなく、長期的には高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病などのリスクが増加します。そのため、睡眠時無呼吸症候群の早期発見と適切な治療が非常に重要です。
② CPAP(持続陽圧呼吸療法)とは
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)とは、睡眠中に専用の鼻マスクを装着し、適切に加圧した空気を鼻や口を通じて気道に送ることで、気道の閉塞を防ぎ、呼吸が途切れないようにする治療法です。この装置は、患者の眠りの質を改善し、無呼吸・低呼吸やいびきを軽減させるために非常に効果的です。CPAP療法によって血中酸素濃度を保ち、昼間の眠気を軽減することができます。
③ CPAP療法の保険適応
CPAP療法は、在宅簡易検査でAHI(無呼吸低呼吸指数)が40回/1時間、または精密PSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)でAHIが20回/1時間以上認められる場合に保険適応で治療が可能となります。AHIとは、1時間あたりの10秒以上の無呼吸・低呼吸の回数を指します。無呼吸の回数が多く、昼間の眠気や集中力の低下が目立つ場合に、CPAP療法は最も効果的な治療法とされています。また、心血管疾患や糖尿病のリスクが高い患者さんにも有益です。診断後、医師は患者一人ひとりの状態に基づいて最適な治療方針を決定します。
④ CPAP療法の副作用
CPAP療法は多くの患者さんに効果的ですが、いくつかの副作用や問題点もあります。主な副作用として以下が挙げられます:
●鼻や口の乾燥、目の違和感:気流にさらされることで鼻や口が乾燥したり、目に違和感が生じたりすることがあります。加温加湿器を併用することで、この問題を軽減できます。
●腹部の張り、おなら:装置から送られる空気を飲み込むことで、腹部に張りを感じたり、おならが出やすくなったりすることがあります。圧力設定を調整することで改善できます。
●皮膚のかぶれや鼻づまり:マスクの装着や装置の調整で対処可能です。
これらの副作用は比較的軽微であり、適切な対処を行うことで解消できます。
⑤ CPAP療法に対するモチベーションの維持
CPAP療法の最大の課題は、治療を続けるモチベーションを維持することです。CPAPの目標は「翌日すっきり目覚めること」ではなく、「5年、10年先に元気でいること」にあります。短期的な改善にとどまらず、長期的な健康を守るための治療であることを理解することが重要です。翌朝すっきり目覚めることも大切ですが、CPAP療法は生活習慣病の予防や生活の質の向上に貢献し、無呼吸回数を減少させることで、長期的に心身の健康を維持することができます。
⑥ 当院での治療について
当院では、日本内科学会総合内科専門医による睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を行っています。専門医が一人ひとりの状態を丁寧に評価し、最適な治療を提供します。また、CPAP療法についても、患者様が快適に続けられるようにサポートし、長期的な健康維持を目指しています。
睡眠時無呼吸症候群は放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。早期の診断と適切な治療を受け、CPAP療法を活用することで、健康な未来を手に入れることができます。気になる症状があれば、ぜひ当院にご相談ください。