当院の骨粗鬆症診療:治療編⑤
今回は、骨粗鬆症における骨代謝調節薬である活性型ビタミンD3製剤とビタミンK2製剤についてお話しします。骨粗鬆症治療薬の分類は下記をご参考にしてください。
表1:骨粗鬆症治療薬の分類
① 活性型ビタミンD3製剤
● 一般名:カルシトリオール(先発品:ロカルトロール)
用法・用量:1回0.25μgを1日2回 経口投与
● 一般名:アルファカルシドール(先発品:アルファロール、ワンアルファ)
用法・用量:1回0.5~1.0μgを1日1回 経口投与
● 一般名:エルデカルシトール(先発品:エディロール)
用法・用量:1回0.75μgを1日1回 経口投与、症状に応じて適宜1日0.5μgに減量する
作用機序:
ビタミンD受容体に結合することで、小腸からのカルシウムイオン(Ca²⁺)吸収を促進し、腎臓からのCa²⁺再吸収も促進します。これにより血中Ca²⁺濃度が上昇し、負のフィードバックによりパラトルモンの分泌が抑制され、骨吸収が抑制されます。また、骨芽細胞に作用し、骨形成を促進します(カルシウムイオンの体内動態については表2をご参照ください)。
表2:カルシウムイオンの体内動態
副作用:
高カルシウム血症のリスクがあるため、定期的な血液検査が推奨されます。
② ビタミンK2製剤
● 一般名:メナテトレノン(先発品:グラケー)
用法・用量:1回15mgを1日3回 経口投与
※脂溶性ビタミンのため、食後に服用することが推奨されます(食後は胆汁分泌が増加し、吸収が促進されます)。
作用機序:
ビタミンK2は骨芽細胞に作用し、オステオカルシン(注1)中のグルタミン酸残基のカルボキシル化(Gla化)を促進することで、オステオカルシンへのカルシウム沈着を促進します(表3)。これにより正常な骨代謝が維持され、結果的に骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を示します。また、骨粗鬆症に伴う疼痛の改善にも効果があります。
注1:オステオカルシンは骨基質(有機基質)であり、骨芽細胞によって合成・分泌されます。
表3:ビタミンK2の作用機序
禁忌:
ワルファリンを服用中の患者さんには禁忌です。ビタミンK2はワルファリンの作用を減弱させるため、注意が必要です。
早期の対応が重要です
骨粗鬆症は早期に対応することが非常に重要です。少しでも気になる症状があれば、お早めにご相談ください。当院では、個別の状況に応じた最適な治療をご提案させていただきます。
参考文献
Premiere Book Part.7:Micelle
骨粗鬆症についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。
① 「当院の骨粗鬆症診療:骨の構造・骨の代謝回転について」。
② 「当院の骨粗鬆症診療:カルシウムイオン(Ca²⁺)の体内動態について」。
③ 「当院の骨粗鬆症診療:ビタミンD3の活性化機序について」。
④ 「当院の骨粗鬆症診療:各論①」。
⑤ 「当院の骨粗鬆症診療:各論②」。
⑥ 「当院の骨粗鬆症診療:治療編①」。
⑦ 「当院の骨粗鬆症診療:治療編②」。
⑧ 「当院の骨粗鬆症診療:治療編③」。
⑨ 「当院の骨粗鬆症診療:治療編④」。