アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~Th2サイトカイン阻害薬(Th2 Cytokine Inhibitor)~
アレルギー性鼻炎の治療において、抗ヒスタミン薬だけでは症状を十分に抑えきれないことがあります。その際に併用することで効果が期待できるのが「Th2サイトカイン阻害薬」です。今回は、わかりやすくその特徴と有用性についてご紹介します。代表的な薬剤として「スプラタストトシル酸塩(アイピーディ🄬)」があります。
Th2細胞とその役割
アレルギー反応に関与する免疫細胞であるTh2細胞は、IL-4、IL-5、IL-13というサイトカインを分泌します。これらのサイトカインは、IgE抗体の産生を促進し、好酸球が組織に浸潤することを引き起こします。これらの反応がアレルギー症状(くしゃみ、鼻水、鼻閉、喘息など)の原因となります。
アイピーディ🄬の作用メカニズム
アイピーディ🄬は、IL-4、IL-5、IL-13の産生を選択的に抑制することによって、アレルギー反応を引き起こす要因を直接的に抑制します。この作用により、IgE抗体の産生が抑えられ、好酸球の浸潤が減少します。その結果、アレルギー症状が軽減します。また、アイピーディ🄬には、ヒスタミンを肥満細胞から遊離させる作用を抑制する効果もあり、これによりさらにアレルギー反応を抑制します。
臨床的には、アレルゲン免疫療法におけるIL-4やIgE値の上昇を抑えることが確認されており、特にアレルギー性鼻炎に対して効果を発揮します。特に鼻漏(鼻水)よりも鼻閉(鼻づまり)に対して効果が高いとされています。これは、遅発相の反応を抑制することによるものです。
併用療法の効果
アイピーディ🄬は、単独使用でも有効ですが、他の作用機序を持つ薬剤との併用によって、その効果がさらに増強されます。特に、抗ヒスタミン薬やステロイド薬との併用が有効とされています。この併用療法により、アレルギー症状の全体的な管理がより効果的に行えます。
アレルギー疾患への適応
アイピーディ🄬は、以下の3大アレルギー疾患において効果が確認されています:
- 気管支喘息:49.2%の改善率
- アトピー性皮膚炎:65.8%の改善率
- アレルギー性鼻炎:57.9%の改善率
これらの疾患において、IL-4やIL-5の産生を抑制することにより、IgE抗体の産生や好酸球の組織浸潤を抑制し、症状の改善が見込まれます。
副作用と安全性
アイピーディ🄬の使用に際して、高頻度の副作用は報告されていません。主な副作用には、消化器系の症状(胃部不快感、嘔気)や肝機能異常(ALT、ASTの上昇)がありますが、発現率は非常に低いです。重大な副作用としては、黄疸やネフローゼ症候群が挙げられますが、これらは頻度が低く、症状が現れた場合には早期の対応が求められます。
まとめ
Th2サイトカイン阻害薬(アイピーディ🄬)は、アレルギー性鼻炎において非常に有用な薬剤です。IL-4、IL-5の産生を抑制することによって、IgE抗体の産生や好酸球の浸潤を抑え、アレルギー症状の軽減に貢献します。特に鼻づまりに対する効果が高く、他の薬剤との併用によりその効果がさらに増強されるため、抗ヒスタミン薬との併用が一般的です。
アレルギー性鼻炎にお悩みの方は、ぜひ当院「くまのまえファミリークリニック」をご受診ください。治療経験豊富なスタッフが、あなたに最適な治療法をご提案いたします。
参考文献
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アレルギー性鼻炎についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。
①「採血なしで、30分で41種類のアレルギーがわかる!最新のアレルギー検査「ドロップスクリーン」のご紹介」。
②「アレルギー性鼻炎:定義と分類」。
④「アレルギー性鼻炎:検査・診断」。
⑤「アレルギー性鼻炎:治療(総論)」。
⑥「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~ヒスタミンH1受容体拮抗薬の役割~」。