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アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~鼻噴霧用ステロイド薬~

アレルギー性鼻炎は、花粉やホコリ、ペットの毛などが原因で鼻づまりやくしゃみ、鼻水などの症状を引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。症状がひどくなると、仕事や学業に集中できなくなるだけでなく、夜間の睡眠の質も低下してしまうため、適切な治療が重要です。その治療法の一つが、鼻噴霧用ステロイド薬です。今回は、この薬の作用や効果について詳しくご紹介します。

 

1. 鼻噴霧用ステロイド薬の働き

鼻噴霧用ステロイド薬は、アレルギー性鼻炎の治療において非常に効果的な薬です。その主な作用は、抗炎症作用にあります。アレルギー反応が起こると、体内で炎症が引き起こされ、これが鼻の粘膜の腫れや過剰な分泌を促進します。鼻噴霧用ステロイド薬は、以下のようなメカニズムで炎症を抑えます。

① 粘膜型マスト細胞や好酸球、リンパ球の鼻粘膜局所浸潤の抑制
     アレルギー反応を引き起こす細胞が鼻粘膜に集まるのを防ぎます。

② サイトカインの産生・放出の抑制
     免疫反応を引き起こすサイトカインの分泌を抑えることで、炎症を抑制します。

③ 血管透過性や腺分泌の抑制
     血管の透過性を低下させ、過剰な液体の漏れを防ぎ、鼻の腫れを抑えます。

④ アラキドン酸代謝の阻害
     ロイコトリエンやプロスタグランジンといった炎症を引き起こす物質の産生を抑えます。

 

これらの作用により、鼻粘膜の腫れや鼻水、鼻づまりなどの症状を効果的に改善することができます。

 

2. 継続的な使用が重要

鼻噴霧用ステロイド薬は即効性がないため、使用してから数日〜1週間で効果が安定してきます。しかし、継続的に使用することが非常に重要であり、使用を続けることで症状の安定化が進み、改善率が上がります。

 

3. 使用される薬剤

現在、国内で使用されている鼻噴霧用ステロイド薬には、いくつかの種類があります。主なものは以下の通りです。

● ベクロメタゾンプロピオン酸エステル (リノコート®) 販売中止

● フルチカゾンプロピオン酸エステル (フルナーゼ®)

● モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物 (ナゾネックス®)

● フルチカゾンフランカルボン酸エステル (アラミスト®)

● デキサメタゾンシペシル酸エステル (エリザス®)

これらの薬剤は、微量でも局所的に強い効果を発揮し、吸収されにくいため、全身的な副作用が少ないのが特徴です。吸収されたとしてもすぐに分解されるため、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルを除き、長期間使用しても安全性が高いとされています。

 

4. 副作用

鼻噴霧用ステロイド薬は一般的に副作用が少ないですが、軽度の鼻内刺激感や乾燥感、鼻灼熱感、鼻出血などが起こることがあります。これらは通常一時的なものであり、症状が続く場合には使用を中止し、医師に相談することが重要です。

 

5. 他の治療薬との比較

鼻噴霧用ステロイド薬は、抗ヒスタミン薬などと並んで花粉症の治療の第一選択薬として使用されますが、ステロイド薬は局所的に作用するため、全身への影響が少ないのが特徴です。特に、抗ヒスタミン薬には眠気や倦怠感といった副作用があることがありますが、ステロイド点鼻薬ではそのような問題は少なく、日常生活への影響を抑えつつ症状を改善することができます。

また、経口薬(抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬)では十分に鼻づまりが改善されない場合もありますが、ステロイド点鼻薬は特に鼻づまりに対して強い効果を持っており、鼻の通りを良くすることができます。重症の症例では、経口薬と点鼻薬の併用も考慮されます。

 

6. まとめ

鼻噴霧用ステロイド薬は、アレルギー性鼻炎の症状を効果的に改善する治療薬であり、特に鼻づまりに優れた効果を示します。即効性はないものの、継続使用することで症状を安定させ、重症例にも効果があります。

アレルギー性鼻炎にお悩みの方は、ぜひ当院「くまのまえファミリークリニック」をご受診ください。治療経験豊富なスタッフが、あなたに最適な治療法をご提案いたします。

 

参考文献

1)  日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編:『鼻アレルギー診療ガイドライン – 通年性鼻炎と花粉症 – 2024年版 改訂第10版』、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、2024年。

2)  奥田 稔:鼻アレルギーにステロイド剤はなぜ効果があるか。medicina 1985; 22: 1170-1171.

3)  鵜飼 幸太郎:局所ステロイド薬の使い方と注意点。アレルギーの臨床 1999; 19: 323-326.

4)  増山 敬祐:ステロイドの功罪―全身投与と局所投与の違い。耳鼻免疫アレルギー 2000; 18: 6-11.

5)  水越 文和、ほか:スギ花粉症に対する徐放性ステロイド治療の問題点と文献的考察。耳鼻免疫アレルギー 2000; 18: 17-20.

6)  Mygind N, et al.: Systemic corticosteroid treatment for seasonal allergic rhinitis: a common but poorly documented therapy. Allergy 2000; 55: 11-15.

7)  Karaki M, et al.: Efficacy of intranasal steroid spray (mometasone furoate) on treatment of patients with seasonal allergic rhinitis: comparison with oral corticosteroids. Auris Nasus Larynx 2013; 40: 277-281.

 

 

アレルギー性鼻炎についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。

①「採血なしで、30分で41種類のアレルギーがわかる!最新のアレルギー検査「ドロップスクリーン」のご紹介」。

②「アレルギー性鼻炎:定義と分類」。

③「アレルギー性鼻炎:発症のメカニズム」。

④「アレルギー性鼻炎:検査・診断」。

⑤「アレルギー性鼻炎:治療(総論)」。

⑥「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~ヒスタミンH1受容体拮抗薬の役割~

⑦「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~ロイコトリエン受容体拮抗薬~

⑧「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬~

⑨「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~Th2サイトカイン阻害薬(Th2 Cytokine Inhibitor)~

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