B型肝炎における「キャリア」とは?
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで肝臓に異常を引き起こす病気です。感染した場合、必ずしも症状が現れるわけではありません。特に「キャリア」と呼ばれる状態の人々は、感染しているものの症状がありません。今回は、B型肝炎における「キャリア」について詳しく解説します。
1.キャリアとは?
B型肝炎のキャリアとは、免疫機能が未熟な乳幼児期(免疫寛容期)にB型肝炎ウイルスに感染した場合、中和抗体が形成されず、ウイルスが肝臓で増殖し、血液中にウイルスが存在する状態を指します。キャリアには、無症候性キャリア(症状が現れない)や非活動性キャリア(ウイルスが鎮静化した状態)などが含まれます。
2.無症候性キャリア、非活動性キャリアについて
● 無症候性キャリア 無症候性キャリアは、乳幼児期にHBVに感染し、免疫応答が未熟であるため、中和抗体が形成されずに持続的な感染が続く状態です。感染後、免疫寛容の状態が続き、HBe抗原陽性かつHBV DNAが活発に増殖するものの、ALT値は正常で肝炎の活動性はほとんどありません。免疫寛容とは、免疫システムが異物を排除するのではなく、逆に受け入れる状態を指します。この状態は免疫抑制と考えることができます。多くの場合、免疫寛容期は乳幼児期に始まり、その期間は数年から20年以上にわたることもあります。
● 非活動性キャリア 非活動性キャリアは、無症候性キャリアが成人に達すると、免疫応答が活発になり(免疫応答期)、活動性肝炎を経て、HBe抗原が消失し、HBe抗体が出現する(HBe抗原セロコンバージョン)ことにより肝炎が鎮静化します。この結果、HBV DNA量が2000IU/ml(3.3LogIU/ml)以下に減少します。一部のケースでは、HBs抗原が消失し、HBs抗体が現れることがあります。この状態では、肝機能が改善し、病気の進行や発がんリスクは低く、長期的な予後は良好です。
3.再活性化とは?
再活性化とは、免疫抑制剤や化学療法などにより、HBVが再び増殖する現象を指します。再活性化には、キャリアからの再活性化と、既往感染者(HBs抗原陰性、HBc抗体またはHBs抗体陽性)からの再活性化が含まれます。既往感染者からの再活性化は「de novo B型肝炎」と呼ばれ、重症化や劇症化のリスクが高く、劇症化した場合には治療が難しくなることもあります。そのため、免疫抑制剤や化学療法を予定している患者さんには、B型肝炎ウイルスのスクリーニングが必須です。
4.キャリアの方の妊娠について
B型肝炎キャリアの女性が妊娠する場合、ウイルスが胎児に感染するリスクがあります。適切な対策として、出生時に免疫グロブリンとB型肝炎ワクチンを投与することが推奨されます。妊娠を希望する場合は、事前に専門医と相談し、必要な検査と治療を受けることが重要です。
5.当院の肝臓外来について
当院では、日本肝臓学会肝臓専門医によるB型肝炎の検査と治療を行っています。B型肝炎が疑われる場合や、定期的なフォローアップが必要な患者様には、専門的な検査と治療を提供しています。検査でB型肝炎が疑われる場合や、経過観察を希望される方は、ぜひ当院にご相談ください。患者様一人ひとりに合わせた適切な治療を提供し、安心して治療を受けていただけるようサポートいたします。
文献
B型肝炎治療ガイドライン(第4版):日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編