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当院における潰瘍性大腸炎診療:抗IL-(12/)23抗体製剤編

当院では、潰瘍性大腸炎の治療において最新の治療薬を積極的に導入しており、その一環として抗IL-(12/)23抗体製剤も使用しています。今回は、IL-23p19モノクローナル抗体製剤である「ミリキズマブ(オンボー🄬)」と「リサンキズマブ(スキリージ🄬)」について、その作用機序や適応、投与スケジュール、副作用などを詳しくご説明いたします。

 

① IL-23とミリキズマブ・リサンキズマブの作用機序

IL-23(インターロイキン-23)は免疫系の細胞において重要な役割を果たすサイトカインで、特にT細胞の活性化や炎症反応に深く関与しています。潰瘍性大腸炎をはじめとする自己免疫疾患や炎症性疾患において、IL-23は重要な因子とされています。ミリキズマブとリサンキズマブはIL-23のサブユニットであるp19をターゲットにしたモノクローナル抗体です。これらの薬剤はIL-23の働きを抑制し、免疫系の過剰な反応を抑えることで炎症を軽減します。

 

② ミリキズマブ、リサンキズマブの適応と投与スケジュール

●ミリキズマブ: 主に中等度から重度の潰瘍性大腸炎の治療に使用されます。寛解導入療法では、初回・4週間後・8週間後に300mgを点滴静注(30分以上かけて)します。寛解維持療法では、点滴静注を4週間ごとに3回投与した後、4週間ごとに1回200mgを皮下注射します。また、維持療法中に効果減弱が認められた場合、再導入療法として点滴静注(300mg)を4週間ごとに3回投与することが可能です。ミリキズマブの皮下注射にはシリンジとオートインジェクターの2タイプがあり、1回の投与で2本を使用します。2024年6月より、在宅での自己注射が保険適用となり、受診間隔をあけることができるようになりました。

●リサンキズマブ: 同様に中等度から重度の潰瘍性大腸炎の治療に使用されます。寛解導入療法では、初回投与後、2回目は4週間後、3回目は8週間後に1200mgを点滴静注(1200mgの場合、2時間以上かけて点滴)します。寛解維持療法では、点滴静注を4週間ごとに3回投与した後、12週間ごとに1回180mgの皮下注射を行い、以降は8週間ごとに1回180mgの皮下注射を継続します。効果減弱時には、1回360mgの皮下注射を8週間ごとに投与することも可能です。寛解維持療法開始後16週以降に効果減弱が見られた場合、1200mgの点滴静注を単回で投与できます。

 

③ 副作用

ミリキズマブとリサンキズマブに共通する副作用としては、注射部位の反応(赤み、痛み、腫れなど)、感染症(風邪や水虫など)、頭痛、疲労感などがあります。重篤な感染症やアナフィラキシー反応(1〜5%未満)が報告されているものの、IL-23p19モノクローナル抗体製剤に特有の副作用はありません。副作用が現れた場合は、早期の対応が可能ですので、適切な管理を行っています。

 

④ ウステキヌマブとの違い

ウステキヌマブ(ステラーラ🄬)は、IL-12およびIL-23の両方のサブユニットをターゲットとする薬剤ですが、ミリキズマブおよびリサンキズマブはIL-23のp19サブユニットに特異的に作用します。作用機序には違いがありますが、どの薬剤がより効果的であるかは現時点では確定していません。患者様の状態に基づき、最適な治療を選択することが重要です。

 

⑤ 当院の取り組み

当院では、潰瘍性大腸炎の治療において、個別化医療を重視しています。患者様一人ひとりの症状や生活状況を考慮し、最も効果的で安全な治療法を提供できるよう努めています。また、最新の治療法を積極的に取り入れ、常にガイドラインに基づいた適切な治療を行っています。血便や下痢が続いてお困りの方や、既存の治療を継続したい方など、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。当院では日本消化器病学会消化器病専門医が最適な治療法を提案させていただきます。

潰瘍性大腸炎に関するご質問やご相談がございましたら、ぜひ当院を受診してください。お待ちしております。

 

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