くまのまえブログ

当院の骨粗鬆症診療:ビタミンD3の活性化機序について

今回は、骨粗鬆症におけるビタミンD3の活性化機序について詳しくお話しさせていただきます。骨粗鬆症は骨が脆くなり、骨折のリスクが高まる病気です。この病気の予防や治療において、ビタミンD3は非常に重要な役割を果たしています。ビタミンD3の活性化機序について理解することは、骨粗鬆症の治療において必須となります。今回は、2024年度の医師国家試験の過去問を取り上げ、実際の試験問題を通じて知識をアウトプットしていきましょう。

 

①ビタミンD3の活性化機序

ビタミンD3の活性化には、いくつかのステップが関わっています。

1.皮膚でのビタミンD3合成
皮膚に存在するプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)は紫外線(UVB)を受けると、ステロイド骨格の一部が開環して、ビタミンD3(コレカルシフェロール)に変わります。

2.肝臓と腎臓での水酸化
ビタミンD3はまず肝臓25位水酸化され、次に腎臓1α位水酸化を受け、最終的に活性型ビタミンD3カルシトリオール)となります。

 

②活性型ビタミンD3の働き

活性型ビタミンD3(カルシトリオール)は、小腸や腎臓、副甲状腺などに存在するビタミンD受容体に結合し、さまざまな生体反応を引き起こします。主な働きには以下のようなものがあります。

カルシウムやリン酸の吸収促進、腎臓でカルシウム再吸収を促進
小腸からのカルシウムリン酸の吸収を促進し、また腎臓でカルシウム再吸収を促進し、血中カルシウム濃度を上昇させます。

骨形成の促進
骨の形成を助け、骨密度の維持や強化に寄与します。

 

活性型ビタミンD3の働きについては、「当院の骨粗鬆症診療:カルシウムイオン(Ca²⁺)の体内動態について」はこちらも参考にしてください。

 

③活性型ビタミンD3関連の医師国家試験の紹介

骨粗鬆症治療薬に含まれる活性型ビタミンD3についての理解は、医師国家試験にも頻出のテーマです。ここで、2024年度の過去問を通じて理解を深めていきましょう。

118B49(,118B50): 次の文により49、50の問いに答えよ。
(今回は118B49のみ解説します)

問題文
78 歳の女性。食欲不振のため救急車で搬入された。
現病歴 : 約 1 週間前から食事摂取が減少し一日中ベッドに横になっていることが多くなった。昨日から食事摂取が困難となったため、夫が救急車を要請した。
既往歴 : 約 25 年前に高血圧症、約 2 年前に Alzheimer 型認知症および骨粗鬆症と診断された。3 か月前に左大腿骨転子下骨折に対して手術が行われた。アンジオテンシン受容体拮抗薬〈ARB〉、カルシウム拮抗薬、活性型ビタミン D 製剤およびコリンエステラーゼ阻害薬を服用している。
生活歴 : 夫と 2 人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴 : 父が脳梗塞、母が脳出血。
現 症 : 意識レベルは JCSⅡ-10。身長 151 cm、体重 46 kg。体温 36.4℃。心拍数 100/分、整。血圧 108/78 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 95%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に異常を認めない。
検査所見 :
尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。
血液所見:赤血球 320 万、Hb 10.1 g/dL、Ht 30%、白血球 7,200、血小板 23 万。
血液生化学所見:総蛋白 7.1 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 23 U/L、ALT 12 U/L、LD 184 U/L(基準値 124~222)、尿素窒素 41 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、血糖 110 mg/dL、Na 146 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 103 mEq/L、Ca 13.6 mg/dL。CRP 0.2 mg/dL。
頭部単純 CT で異常を認めなかった。

118B49 : この患者に認められる可能性が高い所見はどれか。

a )  多 尿
b ) テタニー
c ) Barré 徴候
d ) Trousseau 徴候
e ) 固定姿勢保持困難〈アステリクシス〉

解説
この患者さんは、血清カルシウム値が13.6 mg/dLと高値を示しており、高カルシウム血症の状態です。これは骨粗鬆症治療薬である活性型ビタミンD3製剤による影響とわかります。高カルシウム血症は、まず全身倦怠感、便秘、嘔気、嘔吐などの消化器症状、抑うつ、思考力低下などの精神神経症状、さらに高度になると意識障害が出現します。また、尿濃縮障害を引き起こすため、多尿・脱水となって口喝・多飲を訴えることもあります。頻度は低いですが、腎石灰化症(腎実質内のカルシウム塩沈着)による可逆的な急性腎障害や不可逆的な腎損傷を起こすこともあり、注意が必要です。
よって、答えはa) 多尿となります。

 

④ 当院の骨粗鬆症診療

当院では、骨粗鬆症をはじめとするさまざまな疾患に対して、日本内科学会総合内科専門医による質の高い診療を行っています。患者様一人ひとりに最適な治療法を提案し、生活習慣の改善を含めた包括的なケアを提供しています。骨粗鬆症の診断や治療に関しても、専門的な知識と経験を基にしたアプローチを行っており、安心してご相談いただけます。

骨粗鬆症に関するお悩みやご質問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。当院の専門的なチームがしっかりとサポートさせていただきます。

 

参考文献

Premiere Book Part.7:Micelle

 

骨粗鬆症についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。

当院の骨粗鬆症診療:骨の構造・骨の代謝回転について」。

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