くまのまえブログ

当院の膵疾患治療:膵のう胞について

近年、健診などで偶然発見されることが増えている膵のう胞性腫瘍。これらは膵臓内に液体や粘液を貯める袋状の腫瘍であり、「膵のう胞性疾患」と総称されます。その中でも、特に「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」は発見頻度が高く、重要な疾患として注目されています。本日は、膵のう胞性腫瘍と検診で発見される膵のう胞の多くを占めるIPMNの概要ついて解説いたします。

 

代表的な膵のう胞性腫瘍

膵のう胞性腫瘍には、良性のものと悪性リスクのあるものが存在します。

1. 良性の膵のう胞性腫瘍

〇 仮性のう胞:膵炎などが原因で膵臓内に液体が溜まり、形成されることが多い。

〇 漿液性のう胞性腫瘍(SCN):基本的に良性の腫瘍です。中年の女性に多く、膵体尾部にできやすい円形の腫瘍です。

2. 悪性リスクのある腫瘍

〇 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN):最も代表的な膵のう胞性腫瘍であり、検診で偶然発見されることが多い。

〇 粘液産生膵腫瘍(MCN):中年の女性に多く、膵尾部にほぼ限定して発生。悪性化する可能性があり、診断がついた場合、手術を推奨します。

〇 Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN):20~30歳代の若年女性に多く発生し、膵尾部に発生しやすい腫瘍です。基本的に良性ですが、リンパ節転移や再発例も報告されており、SPNと診断された場合には手術を推奨します。

 

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは

膵のう胞性腫瘍の中で特に重要なIPMN。健診などで膵嚢胞が指摘された場合、IPMNである可能性が非常に高いです。IPMNは膵管上皮から発生する腫瘍で、膵臓内の細い膵管から比較的大きな主膵管に至るまで、さまざまな膵管上皮から発生します。特徴として、粘液を産生し、膵管を閉塞したり、粘液を貯めて膵臓内にのう胞状の「ブドウの房」のような形態を作ります。

IPMNは病変の場所によって、以下の3つのタイプに分類されます。

1. 主膵管型:主膵管に発生するIPMN。比較的大きな膵管に関連しています。

2. 分枝型:膵臓の細い膵管に発生するタイプ。

3. 混合型:主膵管型と分枝型が混在するタイプ。

 

診断・治療

IPMNの診断と治療は、国際膵臓学会(IAP)によって策定された2024年版国際診療ガイドラインに基づいて行われます。診断には画像検査(CT、MRI、内視鏡的超音波など)が使用され、腫瘍の大きさや形状、膵管の状態を評価します。治療方針は腫瘍の悪性リスクや患者さんの全身状態によって異なり、場合によっては手術が必要となることもあります。

 

当院での膵のう胞性疾患の対応

当院では、消化器病学会認定の消化器病専門医が膵のう胞性疾患の検査や定期的なフォローを行っています。膵のう胞やIPMNに関する疑いがある方、または現在基幹病院や大学病院に通院しているものの通院が困難な方は、ぜひ当院でのご相談をお勧めします。私たちがしっかりとサポートし、適切な治療とフォローアップを行います。

膵のう胞性腫瘍は早期発見が非常に重要ですので、気になる症状があれば早期にご相談ください。

 

参考文献

国際膵臓学会ワーキンググループ. エビデンスに基づくIPMN国際診療ガイドライン(日本語版)2024年版. 国際膵臓学会; 2024.

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