くまのまえブログ

当院の糖尿病診療:チアゾリジン薬

糖尿病治療において、血糖降下薬の理解は重要です。特に、インスリン抵抗性改善薬に分類される「チアゾリジン薬」は、2型糖尿病の治療において重要な役割を果たします。今回はその代表的な薬剤であるピオグリタゾンについて解説いたします。

 

チアゾリジン薬

チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善することを目的とした薬剤です。

● 一般名:ピオグリタゾン(先発品:アクトス)

 

ピオグリタゾンの作用機序

ピオグリタゾンは、脂肪細胞に存在するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR-γ)を活性化することにより、脂肪細胞の質が改善され、悪玉のアディポカインであるTNF-αの分泌を抑制し、善玉のアディポネクチンの分泌が増加します。この作用により、インスリン感受性が向上します。実際、グルコースクランプ試験では、ピオグリタゾンが肝臓や骨格筋におけるインスリン作用を増強させ、肝臓からのブドウ糖放出が抑制されることが確認されています。

また、ピオグリタゾンは、女性や高インスリン血症の患者において特に血糖改善効果が高く、インスリン導入を抑制する作用もあることが示されています。

 

ピオグリタゾンの適応

ピオグリタゾンは、日本においては2型糖尿病の治療薬として使用されています。さらに、以下の効果が期待されることがわかっています:

● HDL-C(高密度リポタンパク質コレステロール)の増加

● TG(トリグリセリド)の低下

● NASH(非アルコール性脂肪肝疾患)患者における肝脂肪率の低下や肝繊維化の改善

また、非糖尿病のインスリン抵抗性患者に対して投与することで、脳卒中や心筋梗塞の再発予防にも寄与する可能性があります。糖尿病患者においては、大血管症の予防や動脈硬化の進行抑制効果も示唆されています。

 

ピオグリタゾンの副作用と注意点

ピオグリタゾンは効果的な薬剤ですが、いくつかの副作用や注意点があります。

主な副作用:

● 体液貯留による浮腫や心不全の悪化

● 体重増加(脂肪細胞の分化促進作用による)

● 肝障害(肝機能障害のある患者には使用を避けるべき)

 

禁忌:

● 心不全の既往がある患者

● 重篤な肝・腎機能障害がある患者

● 膀胱癌治療中の患者または高リスクの患者(長期使用による膀胱癌発生リスクについては、現在のデータでは可能性は否定的ですが、注意が必要です)

 

注意が必要な点:

ピオグリタゾンによる骨折のリスクが増加することが報告されており、特に女性閉経後の高齢女性には慎重に使用する必要があります。

体液貯留による心機能の悪化を避けるため、少量からの投与開始が推奨されます。

 

まとめ

ピオグリタゾン(アクトス)は、インスリン抵抗性の改善を通じて血糖をコントロールする有効な薬剤ですが、体液貯留や体重増加といった副作用には十分な注意が必要です。特に心不全の既往歴がある方や、高齢女性には慎重な投与が求められます。糖尿病治療における薬剤選択は、個々の患者様の状況に応じて行う必要があり、当院では適切な指導を行いながら治療を進めています。

 

次回は、同じインスリン抵抗性改善薬に分類される「ビグアナイド薬」について解説いたしますので、ぜひご覧ください。

 

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