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アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~ヒスタミンH1受容体拮抗薬の役割~

アレルギー性鼻炎の治療において、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)は重要な役割を果たしています。今回は、この薬剤の作用機序や発展について、さらにその種類や使い方について詳しくお伝えします。

 

ケミカルメディエーター受容体拮抗薬 (Chemical mediator receptor antagonists)

発症メカニズムの最終段階である標的組織を作用点とします。アレルギーのケミカルメディエーターとしてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサンA2、血小板活性化因子(PAF)、キニンなどが報告されていますが、ヒスタミン、ロイコトリエン、PAFを除き、病態への関与のメカニズムに関しては十分に明らかにされていません。現在、アレルギー性鼻炎の治療のために抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬が市販されていますが、この中でも抗ヒスタミン薬は1940年代からアレルギー性鼻炎治療薬として用いられ、現在も広く使用されています。

 

ヒスタミンH1受容体拮抗薬の発展

アレルギー反応の最終段階であるヒスタミンの放出に対して、H1受容体拮抗薬が作用します。ヒスタミンは、上述のとおりアレルギー反応の主要なケミカルメディエーターの一つであり、アレルギー性鼻炎の症状—くしゃみ、鼻水、鼻づまり—に強く関与しています。

最初に登場した第1世代H1受容体拮抗薬は、ジフェンヒドラミン(レスタミン🄬)やプロメタジン塩酸塩(ピレチア🄬)などで、これらは速効性がありましたが、効果持続時間が短く、また副作用も多く、中枢抑制作用により鎮静、眠気や認知能力の低下、抗コリン作用による口渇、尿閉や便秘などが問題でした。そのため、治療に使う場面が限られることがありました。次に開発されたのは、クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン🄬)、クレマスチンフマル酸塩(タベジール🄬)などで、効果が長く持続し、抗ヒスタミン作用は強くなりましたが、副作用の軽減はわずかでした。これらの第1世代抗ヒスタミン薬の抗コリン作用は、アミノ酸配列におけるヒスタミンH1受容体とムスカリンM1受容体の相同性が30%以上であり、他の受容体と比較して最も高いことに起因しています。

 

第2世代抗ヒスタミン薬の登場

アレルギー性鼻炎に適応のある第2世代抗ヒスタミン薬として、本邦ではケトチフェンフマル酸塩(ザジテン🄬)、アゼラスチン塩酸塩(アゼプチン🄬)、オキサトミドが導入されました。これらは抗ヒスタミン作用のほかに多彩な抗アレルギー作用を有することが実験的に証明され、臨床的にも第1世代抗ヒスタミン薬の欠点である鎮静作用や抗コリン作用が軽減され、鼻閉にも効果を有することが示されました。

続いて、メキタジン(ゼスラン🄬、ニポラジン🄬)、エピナスチン塩酸塩(アレジオン🄬)、エバスチン(エバステル🄬)、セチリジン塩酸塩(ジルテック🄬)、ベポタスチンベシル酸塩(タリオン🄬)、フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ🄬)、オロパタジン塩酸塩(アレロック🄬)、ロラタジン(クラリチン🄬)、レポセチリジン塩酸塩(ザイザル🄬)、レポセチリジン塩酸塩/塩酸プソイドエフェドリン配合剤(ディレグラ🄬)、ビラスチン(ビラノア🄬)、デスロラタジン(デザレックス🄬)、ルパタジンフマル酸塩(ルパフィン🄬)などが市販され、効果がより長く持続するようになり、副作用が著明に改善されました。

 

鎮静作用の強い方が効果も強い?

抗アレルギー作用と鎮静作用は全く異なります。鎮静作用を低くするために親水性の官能基(-COOH, -NH2)を導入して、血液脳関門を通過しにくくしています。谷内は抗ヒスタミン薬の中枢抑制作用の程度を脳内H1受容体占拠率から分類し、第1世代抗ヒスタミン薬(鎮静性)が50%以上の脳内H1受容体を遮断するのに対して、非鎮静性抗ヒスタミン薬は20%以下と報告しています。そして、第2世代抗ヒスタミン薬のうち、後期に開発されたものにおいては、眠気などの中枢抑制作用は著明に改善されています(非鎮静性抗ヒスタミン薬)。しかし、第2世代抗ヒスタミン薬でも中枢への移行は薬剤により異なり、分子量の大きさ、脂溶性などの性質に加え、血液脳関門における輸送系の1つであるP糖蛋白の関与なども指摘されています。

 

第1世代と第2世代抗ヒスタミン薬の違い

一般的に、第1世代抗ヒスタミン薬はくしゃみ、鼻漏に効果があるが、鼻閉に対しては効果が劣り、一時的に軽症や中等症に対して使用されます。第2世代抗ヒスタミン薬は、全般改善度や鼻閉に対する効果が優れています。また、第1世代の抗ヒスタミン薬の副作用として、眠気、胃腸障害、口渇、めまい、頭痛などがあり、車の運転をする人、危険な作業をする人には注意して投与します。抗コリン作用の強い第1世代抗ヒスタミン薬は、緑内障、前立腺肥大、気管支喘息には禁忌となります。小児は、成人に比べ、中枢抑制作用が少なく、むしろ痙攣などの興奮作用を認めることがあり、注意が必要です。ケトチフェンフマル酸塩は日本では第2世代に分類されてガイドラインに入っているが、強力な鎮静作用をもっており、欧米ではほとんど使用されていません。さらに、日本ではOTC薬を含め鎮静性抗ヒスタミン薬がいまだに頻用されており、その危険性はあまり認識されていません。

 

理想的な抗ヒスタミン薬

理想的な抗ヒスタミン薬には、以下の条件が求められます:

1. 速効性があり、効果が持続する:即効性であり、長時間作用することが求められます。

2. 副作用が少ない:眠気や作業効率の低下を引き起こすことなく、日常生活を支障なく送れることが理想です。

3. 長期投与が可能で、安全性が高い:長期間服用することを考慮し、安全性が高く、身体に優しいことが重要です。

4. 投与回数が少ない:患者のアドヒアランスを向上させるため、1日1回または2回の服用で済むことが望まれます。

 

現在の治療法

国際的ガイドラインの基準であるARIAにおいても、安全性や有効性について考慮した上で、花粉症治療薬として第2世代抗ヒスタミン薬が推奨されています。充全型の症状を有する中等症以上の患者では、症状に応じて第2世代抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン受容体拮抗薬や鼻噴霧用ステロイド薬の併用により、患者の満足度の高い治療が行われています。

 

次回は抗ロイコトリエン受容体拮抗薬についてお話します。

 

参考文献

1. 鼻アレルギー診療ガイドライン – 通年性鼻炎と花粉症 – 2024年版 改訂第10版:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学

      会、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編

2. 奥田 稔: 抗ヒスタミン薬の臨床. 治療学 1982; 9: 184-186.

3. 田坂 賢二: 抗ヒスタミン薬の作用機序と薬理. 薬局 1983; 34: 27-38.

4. 川内 秀之: 薬物療法におけるH1受容体抗薬の位置付け—臨床医の立場から—. Prog Med 2004; 24: 250-253.

5. 谷内 一彦: 理想的な抗ヒスタミン薬の基準とCONGA会議. Prog Med 2004; 24: 262-267.

6. Yanai K. et al.: Positron emission tomography evaluation of sedative properties of antihistamines. Expert Opin Drug Saf

      2011; 10: 613-622.

7. Bousquet J. et al.: Allergic rhinitis and its impact on asthma (ARIA): Achievements in 10 years and future needs. J Allergy

      Clin Immunol 2012; 130: 1049-1062.

8. 谷内 一彦: 薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療. 日耳鼻 2020; 123: 196-204.

 

 

アレルギー性鼻炎についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。

①「採血なしで、30分で41種類のアレルギーがわかる!最新のアレルギー検査「ドロップスクリーン」のご紹介

②「アレルギー性鼻炎:定義と分類」。

③「アレルギー性鼻炎:発症のメカニズム」。

④「アレルギー性鼻炎:検査・診断」。

⑤「アレルギー性鼻炎:治療(総論)」。

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