くまのまえブログ

アレルギー性鼻炎:治療(総論)

アレルギー性鼻炎は、花粉やダニ、ペットの毛など、さまざまなアレルゲンに反応して鼻の症状が引き起こされる疾患です。これに対する治療は多岐にわたりますが、今回はその基本的な目標やアプローチについてご紹介します。

 

1. 治療の目標(Therapeutic goal)

アレルギー性鼻炎の治療において最も重要なことは、症状を管理し、患者さんが快適な日常生活を送ることができる状態を作り出すことです。治療の目標は以下の3つの状態を目指します。

 

① 症状がない、または軽度で、日常生活に支障がない状態
 患者さんが薬物をほとんど必要としない状態を目指します。

 

② 症状が安定しており、急性の増悪があっても頻度が低く、長期間続かない状態
 症状出現時に薬物投与が必要ですが、安定した状態です。

 

③ 抗原誘発反応がない、もしくはその反応が軽度である状態
 鼻誘発試験の陰性化も寛解状態判定の具体的な判断材料となります。

 

2. 治療法(Treatments)

アレルギー性鼻炎の治療法は主に以下の5つの方法に分けられます。

 

① 患者とのコミュニケーション

治療の初めに重要なのは、患者さんとしっかりとコミュニケーションを取ることです。アレルギー性鼻炎は慢性の疾患であり、長期間にわたって治療に取り組むことが求められます。患者さんが症状をどのように感じているのか、過去の病歴や治療歴についても丁寧に問診し、治療に対する希望や不安を共有することが大切です。

治療の目標設定や、治療に対する理解を深めてもらうためには、アレルギー性鼻炎のメカニズムや治療法についてしっかりと説明し、患者さん自身の積極的な参加を促すことが求められます。患者さんが自分の症状を理解し、日常生活の中で抗原を認識・除去する方法を実践できるよう支援することが、治療効果を高めるポイントとなります。

 

② 抗原除去と回避

アレルギー性鼻炎の治療において、抗原の除去や回避は非常に重要です。完全に抗原を除去することは難しいですが、掃除や寝具の洗濯など、できる限りアレルゲンの量を減らす努力を行うことが推奨されます。

例えば、ダニが原因のアレルギー性鼻炎の場合、防ダニカバーやエアフィルターを活用することが効果的です。特に、日本の高温多湿な気候では、除湿器を使って室内の温度や湿度を適切に保つことがダニの減少に役立ちます。スギ花粉の場合、外出時にはマスクやメガネを使用し、花粉の多い日には外出を控えることが重要です。

また、ペットアレルギーに対しては、ペットの飼育を中止することが最も効果的です。しかし、ペットを飼い続ける場合は、清潔に保ち、室内空間を分けるなどの対策が求められます。

 

③ 薬物療法

薬物療法はアレルギー性鼻炎の治療において最も一般的な方法です。薬物療法には、症状を緩和するための「対症療法」や、発作を予防するための治療が含まれます。しかし、薬物療法だけでは根治には至らず、症状が再発することが多いのが現状です。

代表的な薬物療法には、鼻噴霧用ステロイド薬や抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などがあります。これらは症状の緩和に有効ですが、長期的な治療を要することが多いため、患者さんに継続的に治療する意義や方法について十分な説明を行うことが大切です。

 

④ アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法は、現在、アレルギー性鼻炎に対して期待されている唯一の根治的な治療法です。この治療法では、アレルゲンを少しずつ体に慣れさせることによって、体の反応を抑えることを目指します。治療終了後もその効果が長期間続くことが知られています。

近年、舌下免疫療法(SLIT)が普及しつつあります。これにより、患者さんは自宅で治療を行うことができ、通院の手間を省くことが可能です。ただし、副作用が全くないわけではないため、適切な管理が必要です。

 

⑤ 手術療法

アレルギー性鼻炎が重症化し、薬物療法では効果が得られない場合、手術が選択肢となることがあります。反復する発作によって粘膜が不可逆的に変化し、薬物療法に対して抵抗を示す場合に行われます。しかし、手術後でも再燃を避けることは難しく、引き続き治療が必要となります。

 

まとめ

アレルギー性鼻炎の治療は、患者さんとのしっかりとしたコミュニケーションと、症状に合わせた治療法の選択が重要です。薬物療法やアレルゲン免疫療法をうまく活用し、抗原除去や回避といった生活習慣の改善を行いながら、患者さんが快適な生活を送れるようサポートしていくことが求められます。

 

次回はアレルギー性鼻炎治療の各論についてお話します!

 

参考文献

鼻アレルギー診療ガイドライン – 通年性鼻炎と花粉症 – 2024年版 改訂第10版:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編

 

● アレルギー性鼻炎についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。

①「採血なしで、30分で41種類のアレルギーがわかる!最新のアレルギー検査「ドロップスクリーン」のご紹介」。

②「アレルギー性鼻炎:定義と分類」。

③「アレルギー性鼻炎:発症のメカニズム」。

④「アレルギー性鼻炎:検査・診断」。

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