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アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~生物学的製剤(Biologics)~

アレルギー性鼻炎は、多くの方が悩む症状であり、特に花粉症の季節にはその苦しみが増します。従来の治療法で十分な効果が得られない患者さんにとって、新しい治療法の選択肢として「生物学的製剤(Biologics)」が注目されています。今回は、その中でも「オマリズマブ(ゾレア®)」という薬剤に焦点を当て、治療の詳細を紹介いたします。

 

生物学的製剤とは?

生物学的製剤とは、人体の免疫反応に関連する特定の分子をターゲットにした治療薬です。これにより、アレルギー反応を引き起こす原因となる物質を直接的に抑制することができます。2019年には、重症季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療に、抗IgE抗体製剤が新たに保険適用となり、注目を集めました。代表的な薬剤として「オマリズマブ(ゾレア®)」があります。

 

オマリズマブ(ゾレア®)の作用機序

オマリズマブは、アレルギー反応に関与するIgEをターゲットとしたヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体です。IgEはアレルギー反応を引き起こすマスト細胞と結びつくことで、くしゃみや鼻水などの症状を引き起こしますが、オマリズマブはこれを防ぐことができます。具体的には、オマリズマブは遊離したIgEと結びつき、マスト細胞との結合を阻害し、その活性化を抑制します。これまでに気管支喘息や特発性の慢性蕁麻疹に対して適応を有していました。特に、従来の治療が効果を発揮しにくい重症の花粉症患者に対して有効性を示します。

 

効果とエビデンス

オマリズマブは、日本や欧米で行われた臨床試験においてその有効性が証明されています。例えば、Okuboらの研究では、オマリズマブの投与により、花粉飛散期における鼻症状の薬物スコアが約40%抑制され、眼症状については50%の改善が見られました。また、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の併用でも症状が残る患者に対して、オマリズマブを併用した場合に労働および学習能率が改善されることも確認されています。さらに、治療開始から1週間程度で効果を実感する患者さんも多く、その効果は1ヶ月程度持続します。花粉症のシーズン中には、2週間または4週間ごとに定期的に投与を行う必要があります。

 

使用対象

オマリズマブが適用されるのは、次のような患者さんです:

● 従来の治療法(抗ヒスタミン薬や点鼻薬)ではコントロール不十分な鼻症状が1週間以上持続している重症または最重症の

   季節性アレルギー性鼻炎患者(表1)

● 血清中の総IgE濃度が30〜1500IU/mLであり、体重が20〜150kgの範囲であること

● スギ花粉に対する特異的IgEがクラス3以上であること

● 12歳以上

 

 

副作用と注意点

オマリズマブは高い効果が期待できる一方で、注意すべき副作用もあります。主な副作用には、注射部位の痛みや腫れが挙げられます。さらに稀に、アナフィラキシーショックやアレルギー反応が起こることがあるため、投与後は観察が必要です。また、治療中はめまいや疲労感、失神、傾眠などが現れることがあるため、危険な作業を避けるように指導することが重要です。妊婦や授乳婦に関しては、危険性を示す確定的な情報はなく、治療上の有益性を考慮して使用を検討します。

 

まとめ

オマリズマブ(ゾレア®)は、重症花粉症に悩む患者さんにとって、非常に有効な治療選択肢となります。従来の治療法で効果が得られなかった方にとって、症状の大幅な改善が期待でき、仕事や学業への影響を最小限に抑えることが可能です。花粉症の治療に新しい希望をもたらすオマリズマブについて、興味がある方は、当院(くまのまえファミリークリニック)にご相談いただき、適応の有無を確認してみてください。

 

 

参考文献

1. 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編:『鼻アレルギー診療ガイドラ

      イン – 通年性鼻炎と花粉症 – 2024年版 改訂第10版』、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、2024年。

2. Okubo K. et al.: Omalizumab is effective and safe in the treatment of Japanese cedar pollen-induced seasonal allergic

      rhinitis. Allergol Int 2006; 55: 379-386.

3. Nagakura T. et al.: Omalizumab is more effective than suplatast tosilate in the treatment of Japanese cedar pollen-induced

      seasonal allergic rhinitis. Clin Exp Allergy 2007; 38: 329-337.

4. Okubo K. et al.: Add-on omalizumab for inadequately controlled severe pollinosis despite standard-of-care: a randomised

      study. J Allergy Clin Immunol Pract 2020; 38: 329-337.

5. 大久保公裕:スギ花粉症に対する免疫療法 ― 舌下免疫療法と抗体療法. アレルギー 2021; 70: 948-954.

6. 岡野光博ほか:アレルギー疾患治療における分子標的薬の新展開 ― アレルギー性鼻炎. 炎症と免疫 2021; 29: 421-427.

7. Hirano K. et al.: Impact of omalizumab on pollen-induced seasonal allergic rhinitis: An observational study in clinical

      practice. Int Forum Allergy Rhinol 2021; 11: 1588-1591.

8. Miller M. et al.: The impact of omalizumab on paid and unpaid work productivity among severe Japanese cedar pollinosis

      (JCP) patients. J Med Econ 2022; 25: 220-229.

9.「アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き」作成委員会: アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引

      き。日本アレルギー学会、2022年。

 

アレルギー性鼻炎についての、過去のくまのまえブログは下記を参照してください。

①「採血なしで、30分で41種類のアレルギーがわかる!最新のアレルギー検査「ドロップスクリーン」のご紹介」。

②「アレルギー性鼻炎:定義と分類」。

③「アレルギー性鼻炎:発症のメカニズム」。

④「アレルギー性鼻炎:検査・診断」。

⑤「アレルギー性鼻炎:治療(総論)」。

⑥「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~ヒスタミンH1受容体拮抗薬の役割~

⑦「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~ロイコトリエン受容体拮抗薬~

⑧「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬~

⑨「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~Th2サイトカイン阻害薬(Th2 Cytokine Inhibitor)~

⑩「アレルギー性鼻炎 :治療(各論)~鼻噴霧用ステロイド薬~

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