2026年9月26日(土)・27日(日)、北海道札幌市の札幌パークホテルで開催された
「第65回十四大都市医師会連絡協議会」に、名古屋市医師会の一員として参加してきました。
今回のメインテーマは、
🌈「ACP ―人生に寄り添う医療と対話を目指して―」
です。
ACPは、これからの地域医療・在宅医療を考えるうえで非常に重要なテーマです。
今回は私自身も分科会で発表を担当する機会をいただきましたので、
会の様子とともに、皆さんにもぜひ知っていただきたい「ACP(人生会議)」についてご紹介したいと思います。

🏨 第65回十四大都市医師会連絡協議会
📅 開催日
2026年9月26日(土)・27日(日)
📍 会場
札幌パークホテル
🎤 メインテーマ
「ACP ―人生に寄り添う医療と対話を目指して―」
主務地区医師会である札幌市医師会の今 眞人会長のご挨拶などによる全体会議・開会式の後、
14時30分から第1~第3分科会がそれぞれの会場で開催されました。
各都市の医師会から、
それぞれの地域で実践されている取り組みについて発表があり、活発な意見交換が行われました。
🏠 第3分科会「在宅医療」に参加しました
私は、
第3分科会
「在宅医療~地域でのACP支援と多職種連携の実践~」
のうち、
💻 セッション2 「ACPを支える情報連携とICT基盤」
を、名古屋市医師会理事の木本昌子先生とともに担当しました。
テーマは、
「退院支援から救急搬送まで、ACPの意向情報をどう一貫して引き継ぐか。それを支えるICT基盤と課題について」
です。
名古屋市医師会からは、大きく2つの取り組みについて発表しました。
① 夜間・休日の死亡確認体制を「地域全体でカバーする仕組み」として整備していること
② 医療・ケアチーム向け研修と、市民・患者さん向け啓発資材を両輪として展開していること
私は前半の①を担当しました。
発表中にアクシデントもありましたが……💦
なんとか無事に発表を終えることができました😭
今回の協議会のメインテーマにもなったACP。
聞き慣れない言葉という方も多いと思います。
ACPとは、
Advance Care Planning (アドバンス・ケア・プランニング)
の略称です。
もしものときのために、
「自分はどのような医療やケアを受けたいのか」
「どのように過ごしていきたいのか」
といったことを前もって考え、
ご家族や大切な人、医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。
大切なのは、一度決めたら終わりではないということです。
年齢や病気、生活環境などによって気持ちは変化します。
そのため、その時々で自分の希望について考え、
大切な人たちと繰り返し話し合っていくことがACPでは重要になります。
💡 ACPについてさらに詳しく知りたい方は、
厚生労働省「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)してみませんか?」をご参照ください。
🗣️ ACPの愛称は「人生会議」
ACPをもっと身近に感じてもらうため、厚生労働省が愛称を公募し、2018年に決定したのが、
🌈「人生会議」
という名前です。
「人生会議」という愛称を考案したのは、静岡県の病院に勤務する看護師さんでした。
医療の現場で患者さんと接するなかで、
「患者さんが満足できる治療や最期を迎えるために、もっと早い段階から希望について話しておけたら」
という思いを持たれたことがきっかけだったそうです。
そしてACPが医療従事者との話し合いだけではなく、
家族会議や食卓など、もっと身近な場所でも自然に話し合えるものになってほしい――。
そのような願いから「人生会議」という愛称が生まれました。
🌱 元気なときだからこそ考えてみる
「最期のことなんて、まだ考えたくない」
「縁起でもない」
そう感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、ACPは「最期の治療を決めること」だけではありません。
自分が何を大切にして生きていきたいのか。
どこで、誰と過ごしたいのか。
もし自分で意思を伝えられなくなったとき、何を大切にしてほしいのか。
こうしたことを元気なうちから考え、大切な人と共有しておくこともACPです。
事故や急病などによって、突然自分の意思を伝えられなくなる可能性は誰にでもあります。
そんなとき、自分の考えが家族や医療従事者に共有されていれば、
ご本人だけでなく、判断を求められるご家族にとっても大切な手がかりになります。
🩺 名古屋市医師会でもACP研修を行っています
ACPを地域に広げていくためには、市民の皆さんへの啓発だけでなく、
医療・介護に携わる側もACPについて学び続ける必要があります。
名古屋市医師会では、医療・ケアに関わる多職種を対象としたACP研修会を定期的に開催しています。
📘 基礎編では、ACPをこれから学ぶ多職種を対象に、基本的な知識とともに、
「多職種に共通する支援姿勢」
「本人にとって最善の医療・ケアを多職種で考え、支援すること」
などを学びます。
さらに
📗 実践編では、基礎知識を有する多職種を対象として、臨床倫理などを通じ、
「療養される方にとっての最善の医療・ケアとは何か」
を支援チーム全体で考えるための、より実践的な学びを深めています。
💻 名古屋が誇る「はち丸ネットワーク」
今回、私が発表した内容で重要な役割を果たしているのが、
🐝「はち丸ネットワーク」
です。
はち丸ネットワークは、患者さんの同意に基づいて、
病院・診療所・歯科診療所・薬局・訪問看護ステーション・介護サービス事業所などをつなぎ、
医療・介護に関する情報を多職種で共有するためのICTシステムです。
在宅療養では、
👨⚕️ 医師
👩⚕️ 訪問看護師
💊 薬剤師
🏠 ケアマネジャー
🤝 介護スタッフ
など、多くの職種が一人の患者さんに関わります。
だからこそ、必要な情報をチームで共有できる仕組みが非常に重要になります。
🌙 主治医が不在でも地域で看取りを支える
在宅医療では、
「最期まで自宅で過ごしたい」
という希望を持つ患者さんもいらっしゃいます。
しかし、主治医が24時間365日、必ず対応できるとは限りません。
そこで名古屋市では、やむを得ず主治医が不在となる期間に、
在宅医療サポート医が主治医に代わって看取りを支援する仕組みが整備されています。
サポート期間中は、サポート医も「はち丸ネットワーク」を活用し、
普段から支援チームで共有されている情報を確認することができます。
つまり、
👨⚕️「一人の主治医だけで支える」のではなく、
🏙️「地域全体で患者さんを支える」
という考え方です。
これから在宅医療をさらに充実させていくうえで、とても重要な仕組みだと思います。
🚑 救急の現場でも「本人の意思」をつなぐ
さらに、はち丸ネットワークは救急医療との連携にも活用されています。
名古屋市では、人生の最終段階にあり、心肺蘇生を望まない意思を示している方について、
一定の要件のもと、ご本人の意思を尊重した救急活動につなげる取り組みがあります。
「最期まで自宅で過ごしたい」
「心肺停止となった場合に心肺蘇生を望まない」
そこで重要になるのが、本人の意思を平時から確認し、医療・ケアチームで共有しておくことです。
名古屋市では「私の意思書及び医療機関同意書」を用意しており、
はち丸ネットワークにも登録できる仕組みとなっています。
また、名古屋市内の救急隊は、救急隊が使用する端末から、
必要に応じてはち丸ネットワークの情報を確認することができます。
在宅医療から救急医療まで、ICTを活用して情報をつないでいく。
まさに今回のテーマである、
🌈「ACPを支える情報連携」
の実践例の一つだと思います。
💡 ICTだけではACPは完成しません
一方で、どれほど優れたICTシステムがあっても、それだけでACPが実現するわけではありません。
最も大切なのは、
❤️「本人が何を大切にしているのか」
を、ご本人・ご家族・医療・ケアチームが繰り返し話し合うことです。
そして、その話し合いで共有された大切な思いを、必要なときに必要な人へつなげる。
ICTは、そのための大切な「橋渡し役」なのだと思います。
今回、全国の各都市の取り組みを聞き、
名古屋市の「はち丸ネットワーク」は非常に先進的な仕組みの一つであると改めて感じました。
今後もより多くの医療・介護関係者、そして市民の皆さんに活用していただければと思います。
🎺 分科会終了後は懇親会へ
分科会終了後、18時30分からは懇親会が開催されました。
懇親会のオープニングでは、
北海道札幌国際情報高等学校吹奏楽部を母体とする「SIT Band」の皆さんによる生演奏がありました🎺🎷🥁
参加者にも馴染みのある曲を演奏してくださり、
なんと「YAH YAH YAH」も(笑)。迫力ある生演奏で、
懇親会のスタートを華やかに盛り上げてくださいました。
その後、多くの来賓の方々からご挨拶がありました。
参議院議員の自見はなこ先生、釜萢敏先生をはじめとする国会議員の先生方、
また、北海道知事の鈴木直道先生をはじめ、地元北海道・札幌からも多くの来賓の方々が出席されました。
大変多くの方々がご出席されていたため、すべてのお名前をご紹介できず申し訳ありません。
【📷 写真:ご挨拶される北海道知事 鈴木直道先生】
その後は北海道のおいしい食事を堪能しながら、
他都市の医師会の先生方とも交流を深めることができました。
各都市の地域医療の取り組みについて直接お話を伺えることも、
十四大都市医師会連絡協議会の大きな魅力です。
こうして1日目は、発表という大役も無事に終わり、とても有意義な一日となりました😊
☀️ 2日目も貴重な講演が続きました
翌9月27日(日)は、午前9時から全体会議・分科会報告が行われ、
その後、2つの特別講演を拝聴しました。
🎤 特別講演Ⅰ
日本医師会 副会長 茂松茂人先生
演題
「中央情勢報告」
📚 特別講演Ⅱ
直木賞作家 桜木紫乃先生
演題
「残るもの、残すもの」
それぞれ異なる視点からのお話でしたが、
今後の医療や人との関わりについて考える、大変貴重な時間となりました。
📜「札幌宣言2026」が採択されました
最後には、今回の各分科会で交わされた議論をまとめた、
📜「札幌宣言2026」
が採択されました。
しかし、大切なのは宣言を採択することそのものではないと思います。
全国の医師会が集まり、地域医療の課題について熱く議論した内容を、
それぞれの地域へ持ち帰り、日々の診療や地域医療の中で実践していくことが何より重要です。
私自身も今回学んだことを名古屋へ持ち帰り、
地域の皆さんが安心して暮らすことのできる、より良い医療体制づくりにつなげていきたいと思います。
🌈 皆さんも「人生会議」をしてみませんか?
ACPというと、少し難しく聞こえるかもしれません。
しかし、最初から難しいことを決める必要はありません。
たとえば、
💬「自分は何を大切にして暮らしていきたいかな?」
💬「もし病気になったら、どこで過ごしたいかな?」
💬「もし自分で話せなくなったら、誰に自分の思いを伝えてほしいかな?」
そんな会話から始めてみるだけでもよいと思います。
ACPには一つの正解があるわけではありません。
また、一度決めたことを後から変えても構いません。
大切なのは、自分の思いを考え、大切な人と繰り返し話しておくこと。
それが「人生会議」の第一歩です🌈
厚生労働省でも「人生会議(ACP)」について詳しく紹介しています。
👉 厚生労働省「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)してみませんか?」
🏥 最後に
今回、第65回十四大都市医師会連絡協議会への参加のため、
土曜日の診療を休診とさせていただきました。
受診を予定されていた患者さんには、ご不便・ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
週明けから通常どおり診療を再開いたします。
今回の協議会で学んだことを、これからの診療や地域医療に少しでも還元できるよう努めてまいります。