🔥 大腸憩室炎とは?③|右下腹部・左下腹部の痛み、発熱、検査・治療を解説
🏥 右下腹部や左下腹部が痛い!もしかして「大腸憩室炎」?
「右下腹部が痛いけれど、盲腸かな?」
「左下腹部がズキズキ痛む」
「お腹が痛くて、熱も出てきた」
「以前、大腸カメラで憩室があると言われたけれど、関係があるの?」
このような症状がある場合、原因の一つとして考えられるのが、
大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)です。😟
大腸憩室炎とは、
大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみ「大腸憩室」と、その周囲に炎症が起こる病気です。
主な症状は、腹痛や発熱です。
日本人では右側の大腸に憩室ができることも多く、
右下腹部の痛みが虫垂炎(いわゆる盲腸)と似ている場合があります。
一方、左側の大腸に炎症が起これば、左下腹部が痛くなることもあります。
大腸憩室炎の多くは適切な治療によって改善しますが、
重症になると膿瘍(うみがたまること)や穿孔(腸に穴が開くこと)を起こす場合もあります。
また、近年は治療の考え方も変わってきています。
2026年版ガイドラインでは、合併症を伴わない大腸憩室炎に対して、
抗菌薬(抗生物質)を使用しない治療も提案されています。
今回は、
日本消化管学会の『大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026 改訂第2版』を参考に、
大腸憩室炎の原因・症状・検査・治療・再発予防について、
消化器内科医の立場からわかりやすく解説します。✨

大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に向かって袋状に飛び出したものです。
大腸カメラでは、小さな穴やくぼみのように見えます。
大腸憩室そのものは珍しいものではなく、症状がなければ通常は治療を必要としません。
しかし、その憩室と周囲の組織に炎症が起こることがあります。
これが大腸憩室炎です。
🌀 なぜ憩室に炎症が起こるの?
以前は、憩室の中に便などが詰まり、
細菌が増えることが主な原因と考えられていました。
しかし現在では、憩室炎の発症には、
腸の壁の変化や炎症反応、腸内細菌叢など、
複数の要因が関係すると考えられています。
そのため、「便が憩室に詰まったから、必ず炎症が起こる」という単純な仕組みではありません。
また、憩室がたくさんあるからといって、
必ず憩室炎を起こすわけでもありません。
🩸 大腸憩室出血とは違うの?
大腸憩室に関連する代表的な病気には、次の2つがあります。
🩸 大腸憩室出血
憩室の近くの血管から出血する病気です。
突然の血便が主な症状で、腹痛を伴わないことが多いのが特徴です。
🔥 大腸憩室炎
憩室とその周囲に炎症が起こる病気です。
腹痛や発熱が主な症状です。
つまり、
「突然の血便」が中心なのか、
「腹痛や発熱」が中心なのかが、
両者を理解するポイントです。
ただし、症状だけで確実に診断できるわけではありません。
大腸憩室炎の代表的な症状は、腹痛と発熱です。
🔴 ① お腹の一部分が痛くなる
大腸憩室炎では、炎症が起きている場所に一致して、
お腹の一部分が痛くなることがあります。
痛みは、じわじわと始まる場合もあれば、次第に強くなる場合もあります。
特に、押すと痛みが強くなることがあります。
🌡️ ② 発熱することがある
炎症によって発熱することがあります。
ただし、必ず高熱が出るわけではありません。
熱があまり高くなくても、憩室炎が起きている場合があります。
🚽 ③ 便通の変化や吐き気を伴うことも
腹痛や発熱のほかに、次のような症状が現れる場合もあります。
● 🚽 便秘や下痢
● 🤢 吐き気
● 🍚 食欲低下
● 🎈 お腹の張り
● 😣 全身のだるさ
ただし、これらの症状は憩室炎に特有のものではありません。
腹痛が続く場合には、自己判断せず、医療機関で原因を確認することが大切です。
大腸憩室炎では、炎症が起こる場所によって痛む位置が異なります。
👉 右側の大腸に炎症が起きた場合
盲腸や上行結腸など、右側の大腸に憩室炎が起こると、
右下腹部が痛くなることがあります。
日本人を含むアジア人では、右側の大腸に憩室が多い傾向が知られています。
そのため、右下腹部痛では大腸憩室炎も重要な原因の一つです。
👈 左側の大腸に炎症が起きた場合
下行結腸やS状結腸など、左側の大腸に憩室炎が起こると、左下腹部が痛くなることがあります。
欧米では左側の大腸、特にS状結腸の憩室炎が多いことが知られています。
日本でも、左側の憩室炎がみられます。
❓ 虫垂炎(盲腸)とはどう違うの?
右下腹部の痛みがある場合、虫垂炎と大腸憩室炎は症状が似ていることがあります。
虫垂炎では、みぞおちやおへその周囲から痛みが始まり、右下腹部に移ることがあります。
痛みの場所や経過だけで両者を確実に見分けることはできません。
虫垂炎のほかにも、尿路結石、婦人科疾患、腸炎など、腹痛の原因はさまざまです。
そのため、診察や血液検査、画像検査などを組み合わせて判断します。
大腸憩室炎の中には、炎症が周囲に広がり、重症化するものがあります。
特に注意したい合併症は、次のようなものです。
🟠 膿瘍(のうよう)
炎症によって、大腸の周囲にうみがたまる状態です。
膿瘍の大きさや患者さんの状態によっては、
抗菌薬による治療や、うみを排出する処置が必要になります。
🔴 穿孔(せんこう)
大腸の壁に穴が開くことです。
腸の内容物が腹腔内に漏れ、
腹膜炎を起こす場合があります。
🚨 腹膜炎(ふくまくえん)
炎症が腹部全体に広がった状態です。
重症の場合には、緊急手術が必要になることがあります。
🚑 すぐに救急受診したい症状
次のような場合には、通常の外来診療を待たず、
速やかに救急医療機関を受診してください。
🚨 我慢できないほどの強い腹痛
🚨 お腹全体に広がる痛み
🚨 お腹が硬くなり、少し動くだけでも強く痛む
🚨 腹痛に加えて、繰り返す嘔吐や著しい体調不良がある
🚨 高熱や悪寒があり、ぐったりしている
🚨 意識がもうろうとする、倒れそうになる
特に、意識障害やショックが疑われる場合には、119番へ連絡してください。
大腸憩室炎が疑われる場合には、
症状や診察所見に加えて、血液検査や画像検査を組み合わせて診断します。
🩺 ① 診察・腹部の触診
まず、
いつから痛みがあるのか、
どこが痛むのか、
発熱や吐き気があるかなどを確認します。
また、お腹を押したときの痛みや、
腹膜炎を疑う所見がないかを診察します。
🩸 ② 血液検査
血液検査では、
白血球数やCRPなど、
炎症の程度を判断するための項目を確認します。
ただし、血液検査だけで憩室炎と確定できるわけではありません。
また、炎症反応が軽くても、憩室炎を完全に否定できるとは限りません。
🖥️ ③ 腹部CT検査
大腸憩室炎の診断や重症度の評価では、
腹部CT検査が重要です。
CT検査では、
大腸の壁が厚くなっていないか、
周囲の脂肪組織に炎症が広がっていないかなどを確認できます。
さらに、膿瘍や穿孔などの合併症がないかを調べることもできます。
必要に応じて、超音波検査などを用いる場合もあります。
📷 ④ 大腸カメラはすぐに行うの?
大腸憩室炎が疑われる場合、
炎症が強い時期に、必ずしも大腸カメラを行うわけではありません。
急性期には、腸の壁が炎症によって弱くなっている場合があるためです。
そのため、
まずは診察やCT検査などで状態を評価し、
必要に応じて炎症が落ち着いてから大腸カメラを検討します。
今回、特に知っていただきたいのが、
抗菌薬(抗生物質)の使い方についての考え方です。
以前は、大腸憩室炎と診断された場合、
抗菌薬を投与することが一般的でした。
しかし、近年の研究によって、
必ずしもすべての大腸憩室炎に抗菌薬が必要ではないことがわかってきました。
⭐ 2026年版ガイドラインの重要なポイント
日本消化管学会の2026年版ガイドラインでは、
膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎に対して、抗菌薬を投与しないことが提案されています。
これは、韓国や欧州などで行われた臨床研究において、
合併症を伴わない憩室炎では、
抗菌薬を使用しても症状の改善や再発などの結果に明らかな利益が認められなかったことなどを踏まえたものです。
🤔 抗菌薬を使わなくても治るの?
合併症を伴わない軽症の憩室炎では、
抗菌薬を使用せずに改善する場合があります。
ただし、これは「憩室炎なら抗菌薬は必要ない」という意味ではありません。
重要なのは、患者さんの状態を正しく評価することです。
例えば、次のような場合には、抗菌薬の使用や入院治療などを慎重に検討します。
● 🔴 膿瘍や穿孔などの合併症がある
● 🌡️ 全身状態が悪い、重い感染症が疑われる
● 💊 免疫を抑える薬を使用している
● 🏥 免疫機能が低下している
● 🤢 食事や水分を十分に摂れない
● ⚠️ その他、医師が重症化リスクが高いと判断した場合
特に、免疫抑制状態にある患者さんについては、
2026年版ガイドラインでも抗菌薬の使用を考慮するとされています。
抗菌薬を使用するかどうかは、診察や検査結果に基づいて医師が判断します。
自己判断で市販薬だけで様子をみたり、
処方された抗菌薬を中止したりしないようにしてください。
大腸憩室炎の治療は、炎症の程度や合併症の有無によって異なります。
🟢 ① 軽症の場合:外来治療
膿瘍や穿孔を伴わず、全身状態が安定していて、
水分や食事を摂れる場合には、外来治療が検討されます。
2026年版ガイドラインでも、
膿瘍・穿孔を伴わない憩室炎で、
経口摂取が可能な場合には外来治療を提案できるとされています。
ただし、敗血症が疑われる方や免疫抑制状態にある方などには、
同じように外来治療を勧められるわけではありません。
外来治療では、症状に応じて痛みの管理や食事の調整を行い、
必要な場合には抗菌薬を使用します。
また、治療開始後に症状が悪化した場合には、速やかな再診が必要です。
🟠 ② 中等症・重症の場合:入院治療
強い炎症がある場合や、
食事・水分を十分に摂れない場合には、
入院治療が必要になることがあります。
入院中は、点滴や抗菌薬による治療、全身状態の管理などを行います。
🔴 ③ 膿瘍がある場合:排膿処置が必要になることも
大腸の周囲に膿瘍ができた場合には、
抗菌薬だけで改善することもあります。
一方、膿瘍の大きさや状態によっては、
針や管を使ってうみを排出する処置が必要になることがあります。
🚨 ④ 穿孔や腹膜炎がある場合:緊急手術も
大腸に穴が開き、腹膜炎が広がっている場合などには、
緊急手術が必要になることがあります。
ただし、すべての憩室炎で手術が必要になるわけではありません。
大切なのは、
重症化しているかどうかを早期に見極め、適切な治療につなげることです。
「憩室炎になったら、食事を抜いた方がいい?」
「食物繊維はたくさん摂った方がいい?」
このような質問をいただくことがあります。
ここで大切なのは、
炎症が起きているときと、
治ったあとの食生活を分けて考えることです。
🤒 炎症が起きているとき
腹痛や吐き気がある場合には、
普段どおりの食事が難しいことがあります。
そのため、
症状の程度に応じて、
消化しやすい食事や一時的な食事内容の調整を行う場合があります。
ただし、すべての患者さんに絶食が必要というわけではありません。
また、自己判断で長期間食事を抜くことは避けてください。
😊 炎症が落ち着いたあと
症状が改善したら、体調に合わせて徐々に通常の食事へ戻していきます。
普段の食生活では、
野菜や果物、穀物などを適度に取り入れ、バランスのよい食事を心がけましょう。
ただし、
食物繊維をたくさん摂れば、
憩室炎の再発を必ず防げるというわけではありません。
食事内容は、
炎症の程度や回復状況に応じて医師と相談しながら調整することが大切です。
🔁 ⑨ 大腸憩室炎は再発する?日常生活で気をつけたいこと
大腸憩室炎は、一度治っても再発する場合があります。
ただし、すべての方が再発するわけではありません。
また、再発したからといって、必ず手術が必要になるわけでもありません。
🚭 喫煙や肥満に注意
2026年版ガイドラインでは、
喫煙や肥満、脂質異常症、ステロイド使用などが、
憩室炎の再発に関係する要因として挙げられています。
そのため、日常生活では次のようなことを意識しましょう。
● 🚭 禁煙を心がける
● ⚖️ 適正体重を維持する
● 🥗 バランスのよい食事を摂る
● 🚶 適度な運動を習慣にする
● 💊 使用している薬について医師に相談する
なお、これらの生活習慣を整えることは健康管理に役立ちますが、
憩室炎の再発を完全に防げるわけではありません。
💊 痛み止めやステロイドを使っている方は?
一部の鎮痛薬(NSAIDs)やステロイドなどは、
大腸憩室炎の発症や重症化との関連が報告されています。
ただし、自己判断で薬を中止することは避けてください。
必要な薬を中止することで、もともとの病気が悪化する可能性もあります。
薬の使用について心配がある場合は、処方医に相談しましょう。
🌿 ごぼう茶は再発予防に効果があるの?
2026年版ガイドラインでは、
日本国内の比較的小規模な研究で、
ごぼう茶の摂取と憩室炎の再発率低下との関連が報告されていることも紹介されています。
ただし、研究の数や対象者数は限られており、
ごぼう茶を飲めば再発を確実に防げるという意味ではありません。
現時点では、特定の食品だけに頼るのではなく、生活習慣全体を整えることが大切です。
📷 ⑩ 憩室炎が治ったあと、大腸カメラは必要?
「憩室炎が治ったら、大腸カメラを受けた方がいいですか?」
という質問もよくあります。
実は、大腸憩室炎と似た症状や画像所見を示す病気の中には、
大腸がんなどが含まれます。
そのため、憩室炎が改善したあとに、
大腸内視鏡検査でほかの病気がないか確認することが重要になる場合があります。
2026年版ガイドラインでも、
大腸がんを除外する目的で、憩室炎後の大腸内視鏡検査を行うことが提案されています。
ただし、すでに最近大腸カメラを受けている場合などは、
検査歴やCT所見、症状などを踏まえて必要性を個別に判断します。
また、炎症が強い時期に無理に検査を行うのではなく、
回復後の適切な時期に実施することが大切です。
大腸憩室炎そのものが大腸がんになるわけではありませんが、
別の病気が隠れていないか確認する意味があります。
📖 当院の大腸内視鏡検査について、詳しく知りたい方へ
当院のブログ
「🔍 当院では下剤を飲まない大腸カメラ検査を受けることができます」でも、
当院の内視鏡検査の特徴について詳しくご紹介しています。
https://kumanomae-fc.jp/blog/4071/
❓ ⑪ 大腸憩室炎について、よくある質問
Q1.大腸憩室炎は自然に治ることがありますか?
はい。
合併症を伴わない軽症の憩室炎では、抗菌薬を使わずに改善する場合があります。
ただし、症状だけでは重症度を判断できません。
自己判断で放置せず、医師の診察を受けることが大切です。
Q2.大腸憩室炎は必ず発熱しますか?
いいえ。
発熱しない場合や、微熱程度の場合もあります。
特に、腹痛が続く場合には、熱が高くなくても医療機関へ相談してください。
Q3.右下腹部が痛い場合、虫垂炎と区別できますか?
症状だけで確実に区別することは困難です。
診察や血液検査、CT検査などによって判断します。
Q4.憩室炎になったら、必ず入院が必要ですか?
いいえ。
合併症がなく、全身状態が安定し、
食事や水分を摂れる場合には、外来治療が可能なこともあります。
ただし、重症化リスクがある方では入院治療を検討します。
Q5.憩室炎を繰り返したら手術が必要ですか?
再発した回数だけで、必ず手術が必要になるわけではありません。
炎症の程度、
膿瘍や穿孔などの合併症の有無、
日常生活への影響などを考慮して判断します。
🏥 ⑫ 腹痛や大腸の症状が気になる方は当院へご相談ください
くまのまえファミリークリニックでは、
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🌸 ⑬ まとめ|大腸憩室炎は早めの診断と適切な治療が大切!
今回のポイントをまとめます。
✅ 大腸憩室炎は、大腸憩室とその周囲に炎症が起こる病気です。
✅ 右下腹部や左下腹部の痛み、発熱などが主な症状です。
✅ 右側の憩室炎は、虫垂炎と症状が似ている場合があります。
✅ 診断や重症度の評価には、CT検査などが重要です。
✅ 2026年版ガイドラインでは、膿瘍・穿孔を伴わない憩室炎に対して、抗菌薬を使用しない治療も提案されています。
✅ ただし、重症例や免疫抑制状態にある方などでは、抗菌薬や入院治療が必要になることがあります。
✅ 憩室炎が治ったあとには、大腸がんなどを除外するため、大腸カメラが検討されます。
大腸憩室炎は、適切な診断と治療によって改善することが多い病気です。
しかし、
腹痛や発熱を「いつものこと」と考えて放置すると、重症化する場合もあります。
特に、強い腹痛や著しい体調不良がある場合には、早急な受診が必要です。
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📚 参考資料
日本消化管学会編集『大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026 改訂第2版』(南江堂、2026年)




